神はこたつで丸くなる(前編)
みなさんお久しぶりです。私です。最近、刀鍛冶を始めました。
後編→http://inove.jp/ivsid1888
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冬。秋の夜長がさらに長くなり、木枯らしが冬将軍へと代わる季節。
統合世界には白い雪が降り注ぎ、身を切るような寒さが、人々の外出意欲を大幅に減少させる。
家に籠ってやることと言えば、寝るとか、眠るとか、昼寝とか、睡眠するとか、就寝するとか、食っちゃ寝るとか、横になるとか、ゴロゴロするとか、そういったことしかないだろう。
快適なぐうたらタイムのお供として有名なのが、「こたつ」という兵器である。
古来から極東国あたりで使用されており、この兵器の虜になってしまった者は、二度と出ることができないとか、一体化してしまうとか、いろいろ言われている。
ここにもまた一人、こたつの犠牲になった者がいた…
ZZZZZzzzzz…
彼の名は堕精王オベロン。妖精の身でありながら神になるという禁忌を犯した者である。
天界の洞窟に幽閉されていたが、何者かの手によって脱獄。その後の行方はようとして知れず…とされていた。
しかし彼は、今度は洞窟ではなく、こたつに幽閉されてしまったようだ。気持ちよさそうに眠っている。
というかついさっきまで寝ていたのに、また寝ているのだ。どうなっているのだこれは。
寝ても寝足りないということなのだろうか。それにしても寝過ぎである。いい加減起きて欲しいものだ。
彼の向かいに座り、彼の起床を待つこちらの身にもなってほしい。もう7時間が経とうとしている。
一人きりで野郎の寝顔をずっと見つめているということの辛さを、どうか読者の皆様にも分かってもらいたい。何が楽しくてこんなことをしているのだろう。何も楽しくないのに。
いい加減飽きてきたので、アプローチをかけてみようと思う。
ここに油性ペンがある。水性ではない。油性だ。これで彼の顔面に落書きをしようと思う。
何を書けばいいのだろうか。とりあえず定番の、「額に肉の字を書く」でもやってみようか。
あっくそっ前髪で額が隠れてるよこれ。ちょっと前髪どかさないと無理じゃないのこれ。えい。
うわあああしつこい、しつこい前髪だ。なんだこれ。そっとやってもどかないじゃないか。なんだこれは。鉄壁かい。いやらしい前髪だなこいつは。
もういいや。ほっぺに書いちゃえ。ほっぺに肉って書いちゃえ。邪道だけど。
あっ今度はペンのキャップが取れない!何てことだ!いくら力を入れてもキャップが外れない!
くっそー何だこのペンは、不良品じゃないのかい?キャップとペンの間にアロンアルファでも流し込んだのかな?
まるで嫌がらせでもされてるみたいじゃないかこれ。やめてよね。嫌がらせするのは僕の仕事なんだよ。
あ、取れた。責めてごめんよ、油性ペンくん。
…………よいしょ。
んん…
まずい、起きそうだ。撤退しよう。
「肉」じゃなく、「内」になってしまったが、これはこれで面白いので放っておこう。大事なのは何を書いたのか、ではない。書いたかどうか、なのだから。
んんーー…
寝返りを打った。起きるか?起きないのか?
…ZZZZZzzzzz…
どうやら起きないようだ。
作戦の実行を再開する。先ほどの寝返りで前髪がうまいこと動いたので、額が見えた。
「肉」の字を書くチャンスだ!
えい。
…おい。
まずい。起きてた。撤退する。
(足で蹴る)
痛っ!
何してるんだよ、お前…
君の寝顔をもっと近くで見たいと思って…
その手にある油性ペンは?
油性ペン?何のことかな?(ポイッ)
今投げたやつだ。
何も投げてないよ。
投げた。
匙を投げたんだよ。
匙?
君があんまり起きないものだから、僕、もう、匙投げちゃったよ。
適当なこと言うな。
僕はいつでも適当だよ。
で、油性ペンで何しようとしてたんだ。
あれはアイシャドーだよ。
何がアイシャドーだよ。
ビジュアル系にメイクしてあげようと思って。
油性ペンでか。
油性ペンじゃないよ。
油性ペンだろ。ぺんてるって書いてるぞ。
ヘンペル?
ぺんてる!
君の口からヘンペルの名前が出るなんてね…
誰だそいつ…
知らない?ヘンペルって。妖精さんだよ?
知らん。で、油性ペンで何をしようとしたんだ。
ヘンペルのアイシャドーだってば。
…何を言ってるか自分でも分からなくなってきたよ。
油性ペンだろ?
はい油性ペンです。
油性ペンで何をやらかそうとした?
君の顔面を現代アートみたいに面白くしようとしてた。
殺すぞ。
そういう言葉づかいはよくないな。もっとメルヘンチックに表現して。
月に代わって殺すぞ。
もうちょっとほんわかした感じに。
そよ風に包まれて死ね。
もうそれでいいや。
未遂だからいいじゃないか。
未遂じゃないんだけどね。ふふふ。
未遂じゃなきゃお前の首から下が消えてたぞ。
首は残してくれるんだ。優しいね。
腹減った…
今、何時だか知ってる?
知らん。
7時。
朝か…
夜だよ。
腹減ったな…
夕飯時だもんね。
飯。
うん。
…飯。
うん。
…作れ。
やだ。
いててててて力技に頼るのはよくないんじゃあないかなあ!
起きるの面倒くさい…
寒い…
だるい…
動きたくない…
誰か代わりに飯食ってくれ…
夕飯の準備までは代われるけど、そこまでは代われないよ?
飯…
しょうがないなあ。カップ麺でいい?
ん。
………寒いから僕もこたつ出たくないなあ。
出ろ。
いやださむい。
出ろ。お前ならできる。
褒められると伸びるタイプだから、もっと褒めてほしいかな。
いいから出ろクソ神。
人によっては罵倒がご褒美だけど、僕の場合そうじゃないんだよね?
早く飯作れクソ神。
リズッ、ミカルッ、にッ、僕のッ、背中をッ、蹴るのはッ、やめてッ、くれないかなッ?
なんかッ、僕ッ、四つ打ちのッ、ディスコッ、ミュージックッ、みたいにッ、なってッ、きてるよッ。
早くしろ。腹減った。
僕は武力に屈しないよ。
サマーナイツ、
(こたつから脱出して台所へ消える)
(屈してるじゃねえか…)
…………………
…………………
…………………
…………………ZZZZzzzz…………………
寝ないでね?
む…………寝てない…………
思い切り寝てたよ…
赤いきつねとお揚げとうどん、どれがいい?
全部同じじゃねえか。
食えりゃ何でもいい。
じゃあ霞でも食べればいいんじゃないのかい。
霞で腹いっぱいになってたら食事なんてしてない。
だろうねえ。
もう五分経ったよ。早く食べないと麺が伸びるよ。
起き上がるの面倒くさい…
箸持つのだるい…
麺がこっち来い…
今日は特に五月病の症状が重いみたいだね。
僕が食べさせてあげればいいのかな?
舐めてんのかお前は。
何でキレるのさ…
ん゛~~…
お、起きた。
ん゛ん゛~…
箸持った。
…ねむい…
がんばれ、うどんはすぐそこまで来てるよ。
…………(ずずーっ)
偉いぞオベロンくん。
(うとうと)
おーい、寝ちゃだめだよー、今寝たらうどんに顔を突っ込んじゃうよー。
ほらほらちゃんと起きて?(ぺしぺし)
あ゛?
だから何でキレるの…
(ずずーっ)
よしいいぞ。そのままうどん完食しようね。
…何をやってるんだ、僕は…
あっつ!
猫舌発動するの遅くない?
遅延かかってるの?遅延かける側が?
目ぇ覚めた…
それはよかったね。
ここはどこだ。
僕の家。
何で俺はここにいるんだ?
知らないよ。帰ってきたら君がこたつの中にいたんだよ。
は?
は?じゃないよ。こっちのセリフだよ…
玄関に鍵かかってるからって、玄関を破壊するのはどうかと思うよ?
お陰で玄関に開放的な空間ができあがっちゃったじゃないか。僕そういう趣味ないんだけど。
寒いな。
寒いよ。開放的な玄関から吹雪が入り込んでくるんだから。
一体誰がそんなことを…
君だよ!!
お揚げもう一枚食いたい。
話題をシフトチェンジするんじゃない。君だよ!!犯人は!!
(お揚げを強奪する)
極悪非道にも限度があるんじゃないのかい?
お前がそれを言うか?
僕はいいの。何しても許されるよ。愛されてるからね。
絶対誰も許さないし誰も愛してないだろ。
僕に現実を突きつけるのはやめてね。悲しくなるから。
勝手に悲しんでろ。
…てか七味入れてんのかこれ?
入れてないよ。辛いの嫌いだから。
入れろよ…
七味なら台所にあるよ。
取ってこい。
僕は犬じゃないよ。
取ってこいクソ神。
お願いするときはもっと丁寧に。
取ってこい駄犬。
犬じゃないってば…
おあげやるから。
元々僕のお揚げなんだけどね?
こいつがどうなってもいいのか?
お揚げを人質って、君って本当にひどい奴だよね…
お揚げのためなら仕方ない…(こたつを出る)
それでいい。
えーと、七味…七味は…
(お揚げを食べる)
あったあった。
ほら、持ってきたよ。お揚げ返して。
何のことだ?
何のことだ?って、まさか…君…
………………お揚げ食べたな?
知らん。
食べたね?
もともとお揚げなんてなかった。
いや、さっきまでいたよね、お揚げ。
犠牲になったんだ。
何の犠牲だよ。僕のお揚げ返せよ。
俺の頬に落書きしたことは許してやる。
………気づいてたか。
俺を誰だと思ってるんだ?
半殺しされるより、お揚げ取られたほうがマシかな…
そうだろ?
痛いのは嫌いだしね。
賢明な選択だ。
お揚げは犠牲になったね…
これで一件落着だな。
そうだね…
…………………
…………………
って言うと思った?
何だよこいつ面倒くせえな…
どうやら君は食べ物の恨みの恐ろしさが分からないようだね。
知らん。
知らないなら教えてあげよう。
僕は優しいからね。手取り足取り教えてあげるよ。
君の胴体から手足が取れるかもしれないけど、受講料だと思ってくれればいいよ。
やる気か?
やる気スイッチ入ってるよ。
こたつから出たくないから後でな。
いいや、今やらなきゃだめだね。善は急げだよ。
何が善だよ…
僕に殺されるのは幸せなことだと思うけど?
一部のファンしか喜ばないだろ。
喜んでくれるよね?
俺はお前のファンでも何でもないぞ。
じゃあ今からファンになればいいさ。
ちょっと表出ようか。そうじゃないとこたつごと君を滅ぼさなきゃいけなくなるから。
こたつから出たくないんだが。
こたつと共に死ぬことを選んだようだね…
無理だろ、お前じゃ俺に勝てないって。
でも君は、自分自身だけじゃなく、こたつも守らなければいけないよ?
こんなのハンデにもならないな。
自信満々だね。
だって俺フェス限だし。
ぼくもね、再醒進化してるわけだけど。
体力増えただけだろ?
失敬な。火力も上がったよ。
やってみるか?
やってみるよ?
………あーやっぱり…眠いから後にしような……
行動が自由すぎやしないか!
おやすみ…………
寝るなよ!!
………………
………………ZZZZzzzzz………………
……闇討ち上等ってことでいいのかな?食らえレーヴァンテイ
サマーナイツドリーム!
フギャアアアアア!!!!
悪は去ったか…
果たして本当に悪は去ったのか?後編へ続く!