ボカロ/ボイロ

EXボイスを求めて。 #1

タグ:結月ゆかり 東北ずん子

ト書き
注意。この物語はフィクションです。登場人物、団体、組織名、結月ゆかりの胸は架空の物です。
鍵カッコ内が各キャラのセリフ。カッコなしはそのキャラの語り部分だと思ってください。
ト書き
結月ゆかり宅。リビングにて。
結月ゆかり
「EXボイスを作りましょう。」
東北ずん子
「急にどうしました?ゆかりさん。」
結月ゆかり
「EXボイスを作りましょう。」
東北ずん子
「いや、聞こえてますけど…どうしてまたそんなことを?」
結月ゆかり
「最近、他の結月と会う機会があったのだけど、そしたら皆やたら流暢に喋る時があるのよ。」
結月ゆかり
流暢、とは言ったが完全にそのレベルを越えていた。人間が中で喋っているのではないかと錯覚するほどに。余りにびっくりしたので中に人がいないか確認しようと服を脱がそうとしたらその娘は私の頭を殴ってきた。今その事を思い出していたら二重の意味で頭が痛くなってきた…なんてことをしてるんだ私は。しかし、それ程までにその声に興奮してしまったのだ。
東北ずん子
「へぇー!凄いですね!」
結月ゆかり
「それで気になったから聞いてみたのよ。どうしたらそんなに流暢に喋れるのか、って。そしたら皆口を揃えてこう言ったの。」
結月ゆかり
「「「EXボイスって知ってる?」」って。」
東北ずん子
「EXボイス…確か私には標準装備されている機能だと聞いたことがあります!」
結月ゆかり
そうなのだ。私の向かいで話してる緑髪の女の子、東北ずん子には最初から付いてる機能らしいのだ。まったくもって忌々しい。しかし、どうやら話に聞く限りだとこの娘のEXボイスは種類は多いが、地名やら名前といったものがほとんどらしい。それでもEXボイスを持たない私にとっては羨ましい限りだった。私はずん子に多少の妬みを抱きながら話を続けた。
結月ゆかり
「そう。詳しく話を聞くとどうやらずん子、あなたには最初から付いてるけど私たちVOICEROID結月ゆかりには付いてないって言われたわ。」
東北ずん子
「へぇ…そうなんですか?」
結月ゆかり
「だから私は聞いたの。そのEXボイスはどうやったら手に入るのかって。そしたらこう言われたの。」
結月ゆかり
「「分からない…」」
東北ずん子
「えっ!?どういうことですか?もしかしてゆかりさん…他の結月さんに虐められてるんですか?」
結月ゆかり
この娘はこういうところがあるから油断できない。しかもこれを無意識でやってるのだから、質が悪い。私はずん子の言葉に酷く傷ついたが、冷静を装い話を続けた。
結月ゆかり
「私も最初はそう思ったわ。こいつら私一人除け者にしやがって…ってね。でも詳しく話を聞いてみて分かったのだけど、どうやら入手方法が一人一人違うらしいのよ。」
結月ゆかり
「ある人はお金で。またある人はボイストレーニングで。人によっては身体の一部を神に捧げることでそれを手に入れたって言ってたわ。その人は片目だったわね。」
東北ずん子
「ええっ?!身体の一部を犠牲にって…そこまでする必要があったのでしょうか…」
結月ゆかり
「どうかしらね…まぁ彼女は満足そうだったから良いかもしれないけど、流石に身体の一部を犠牲にしてまでは私も遠慮したいわ。そこでずん子。貴女にお願いがあるの。」
結月ゆかり
「私のEXボイスを作るのを手伝ってくれないかしら?」
結月ゆかり
正直、他人に物を頼むのは苦手だ。自分の中の重荷を他人に背負わせてるような気がするからだ。しかし、今回の件を一人でやっていては何年かかるか解らない。だから私は手伝ってほしいとお願いしたのだが…
東北ずん子
「分かりました!そのお願い承りました!」
結月ゆかり
即答である。何も考えてないんじゃないか?この娘。この娘に手伝いを頼んだのは失敗なのではないかと若干の不安を覚えた。
結月ゆかり
「そう……助かるわ、ありがとう。」
東北ずん子
「?…どうかしました?」
結月ゆかり
「いえ、即答されると思わなかったから…ちょっと戸惑っただけよ。」
東北ずん子
「ゆかりさんのEXボイスとやらを私も聞いてみたいですし♪それに話を聞く限りだと作成方法が分からないみたいなので、だったら手伝おうかなーと…」
結月ゆかり
「そう。なら手伝っている間のお金を支払わないとね。」
結月ゆかり
と、私がテーブルの財布を手に取ろうとしたときだった。
東北ずん子
「お金?!要りませんよ!止めてください!!ゆかりさん!私そんなつもりで手伝おうと思ってません!!ただ私はゆかりさんを手伝いたいだけなんですから!EXボイスの事を楽しそうに話していたゆかりさんをです!」
結月ゆかり
と、言われてしまった。えっ?私そんなに表情に出てた?いつの間にかEXボイスへの思いが溢れ出てしまっていたようだ。恥ずかしい…それにしても驚いた。表情を読み取ったこともだが手伝う理由にもだ。しかも報酬はいらないと来た。人が良い…いや、人が良すぎる。何か裏があるのでは…?
と疑ってしまう私とはえらい違いだ。純真無垢とはこの娘を指す言葉ではないのだろうか。広辞苑の純真無垢の例に東北ずん子とでも書いておけばいいんじゃなかろうか、と思ってしまうくらいだ。この人の良さは社会の黒さに染まってしまった私にとってはなかなかキツいものがある。これだからこの娘は油断出来ないのだ。
結月ゆかり
「わ、分かったわ。ちょっと失礼な話だったわね。ごめんなさい。あと、ありがとう。ずん子。では改めて宜しく頼むわね。」
東北ずん子
「はい!頑張ってEXボイス作りましょうね!!…あのゆかりさん?」
結月ゆかり
躊躇いがちにずん子が私の名を呼ぶ。
結月ゆかり
「なに?」
東北ずん子
「えっと…その件に関することで家に参考になるものがあるか調べたいので手伝うのは明日からでも良いでしょうか?」
結月ゆかり
「そう?分かったわ。では明日から宜しく頼むわね。」
結月ゆかり
頭をペコリと下げそれでは、と言ってずん子は帰って行った。スマホを確認すると午後3時になっていた。非常に中途半端な時間だ。おやつの雪苺娘でも食べようかと思い台所に行く脚がピタッと止まる。
結月ゆかり
「そうだ…マキさんにも頼んでみようかな…」
結月ゆかり
と唐突に私の先輩である弦巻マキを思い出した。おやつで思い出すなんて失礼極まりない話だが、まぁそれは置いといて。私はスマホでマキさんに連絡をとった。幸いにもすぐ出てくれて簡単に説明をすると、詳しく話を聞きたいから駅前の喫茶店に来てくれ、と言われた。
結月ゆかり
私は家の鍵をかけて喫茶店へと向かった。この一連の行動に、私という存在をある程度理解してる人から見れば不思議に思うかもしれない。そしてこう言うだろう。お前は人に物を頼むのは苦手ではなかったのか?と。
結月ゆかり
頼むのは苦手だ。でもそれはあくまで東北ずん子のような良心の塊…とまでは行かなくても一般的な人に物を頼むのは、である。
結月ゆかり
「マキさんにはそういった遠慮は必要がないのよね。付き合いも長いしそれに…
結月ゆかり
と色々考えてる内に喫茶店に着いた。恐らくマキさんが来るまでに少し時間がかかるので、店員さんにウインナーコーヒーを頼み、マキさんが来るのを待つことにした。
ト書き
#1終わり。#2に続く。