「本物」のメイド女子高生に出会える学園祭があった!
日本のアニメには「メイドと言えば十代」という不文律が存在しているように見えますが、もちろん現実はそんなに甘くありません。というか労働基準法に引っかかります。なので、現実で「十代のメイド」に接することができるのは大学や高校の学園祭、ということになるでしょう。しかし、どうにもコスプレっぽさが抜けませんよね。というわけで、それを克服するための方策を考えた女子高生たちを紹介します。
(――深夜一時・東北家のとある一室――)
作業用のジャージを身につけたずん子の周囲に、ありとあらゆる工具が散乱しています。そして、薄暗い部屋に浮かび上がるその黄金色の瞳が見つめているのは、なにやら巨大なモノリス。
これで私の念願に……念願に一歩近づいたかもしれない! ふふっ……(¬_,¬)
ふはははははははははははははははっ!!
――深夜の東北家に、ずん子の高笑いが響き渡りました。
(――翌日・放課後――)
――まあ、弓道場の場所まで登山をしなくてもいい、という意味では歓迎ですけど……。ずんねえさまが弓道同好会をお休みにするなんて珍しいですね。まさか、なにかあったんですか?
ふふっ(¬_,¬)b そのまさかだよ、きりたん。本日は同好会長権限で弓道の練習はお休みにして、代わりにうちで「ある道具のテスト」に付き合ってもらいたいな、って。
そらさんの言うとおり、ずん子の顔には疲労が色濃く影を落としています。普段から屈託のない性格なだけに、クマがあったら気になるし、笑顔に元気がなかったら心配になるのでしょう。いずれにせよ、ずん子がこの状態では、部活動をお休みにすることに誰も異議はないはずです。
……ふふっ、そらちゃん(´ω`;) 私はここ一週間、家では「あるもの」を開発し――学校では全力で「政治」を繰り広げてきたのだよ……。根回しって大切だね……。
そうそう。ずん子ったら、「今年こそ『ふる女祭』のクラスの出し物はカフェにするんだ!ヽ(≧▽≦)ノ」ってはりきっちゃって……。クラスで出し物の会議をする前からクラスメイトにそれとなーく『根回し――アッセンブル――』をしてたのよ。
もちろん、売り物の中にずんだ餅を加えてもらうようにもお願いしたよ!ヾ(*'∀`*)ノ
めたんが口にした「ふる女祭」とは、「ふるさと女学院学園祭」の略語です。例年、10月頭の体育祭が終了したあとから準備が始まり、11月頭の文化の日に開催されます。文化祭も兼ねているのですが、ずん子たちはカテゴリ的に「運動部」なので、クラスの出し物がメインなのです。
せっかく「ずんだアロー」を手に入れたのに、去年はクラスで演劇をやることになっちゃったからね……(゚´ω`゚) いや、それはそれで楽しかったんだけど。でも、今年は入念な準備をして、見事ずんだカフェ実現の目処が立ったのだ!!
――ああ、思い出しました。去年は確か……髪の毛の色のせいで「木B」の役でしたね、ずんねえさま。まあ、去年は「ずんだアロー」を手に入れてすぐの文化祭でしたから、そこまで頭が回らなくても無理はないかと。
『あれ~? でもぉ、確か今年の出し物は「メイドカフェ」だったような……?』
ふふふ……(*゚ー゚*) メイドもずんだも同じことよ! 大事なのはカフェのメニューに「ずんだ餅」が記載されること! 「秋葉原にずんだカフェを作る」という夢を持ってるんだから、クラスの出し物程度のカフェを成功させられないで何が夢か! ってことだよ!(フンス
……ま、やる気はあるみたいだし、いいんじゃないかしら。クラス会議で出し物がカフェに決まった瞬間、「ずんだ餅を出しましょう!」と立ち上がって演説を始めた甲斐があるというものね。
めたんの言葉に、ずん子が激しく頷きます。彼女は、寝不足と疲れのコンビがもたらすランナーズハイ状態のせいで、いつもよりちょっとテンションが高めです。
――でも、ずんねえさまって「ずんだアロー」は関係なしに、小学校のころからずんだ大好きでしたよね? 「ふるさと女学院」って小中高一貫校なんですから、今までの「ふる女祭」でカフェをやったりしなかったんですか?
ふふっ……(¬_,¬)b 良いところに気がついたねきりソン君。
そう……。私は小学校一年の「ふる女祭」のころからずっと、「ずんだカフェ」を出し物にすることを訴え続けてきたのだ……(;´Д`) クラスメイトが替わっても、担任の先生が替わっても、ずっと。
ボディランゲージを交え、涙ながらに主張するずん子の姿には、弱冠、この一週間「根回し」という政治活動を続けてきた名残が残っていますが、恐らく一時的なものでしょう。ともあれ「ずんだ」のことに関して、彼女が饒舌になるのはいつものことです。
そう、そのハードルとは……、「ずんだ」をいかに安定して供給するか!! という!! 問題!!。゚ヽ(゚`Д´゚)ノ゚。
ずんだをその場で作っていたのでは間に合わない!。゚ヽ(゚`Д´゚)ノ゚。
だからといって冷凍して持っていこうにも、クーラーボックスなどのレンタル代が余計にかさむせいで、学園祭の規模では予算が足りない!!。゚ヽ(゚`Д´゚)ノ゚。
それに!! ずんだの基本は「自然解凍」!!。゚ヽ(゚`Д´゚)ノ゚。 ずんだが解凍される前にどんどんお客さんが来ちゃったら、これもまた安定しない!!
つまり!! 専門店でもないかぎり!! ずんだをおいしく提供するのって難しいという厳然たる事実が!! 私の前に突きつけられたのだった!!。゚ヽ(゚`Д´゚)ノ゚。
バーサーカーモードに突入したのではないかと勘違いする激しさで語り続けるずん子のテンションについていけないめたんが、ぽかーんとした表情のまま返事をします。何となく言っていることは分かるのですが、喋り方が目立ちすぎて逆に内容が伝わっていません。
――と、とにかく、今年の学園祭ならそのハードルを乗り越えられる、と。
『でもぉ、なかなか難しい問題ですよ~? 今検索してみましたけどぉ、クーラーボックスのレンタル代ってすごく高いですし~。それにぃ、解凍の問題はお金があっても解決しませんからねぇ……』
……そら、アンタよく理解できてるわね……。
ずん子は嬉しそうにそう叫ぶと、履き物を揃えるのもそこそこに、東北家の中へと駆け込んでいきました。
(――東北家・ずん子の私室――)
じゃーん!(o´∀`o)ノ このとっても大きい長方形の箱!! これぞまさに私手作りのクーラーボックス『ずんだパイル・ミリオネア』くんなのです!!
きりたんが思わず感嘆の声を漏らします。アタッシュケースのような銀の輝きを放つ『ずんだパイル・ミリオネア』はゆうに二畳分くらいはある大きさで、いったい中にどれほどのずんだを詰めることができるのか想像すらできません。
ふふ……ふふふふふふふっ!(¬_,¬) これで……これで「クーラーボックスのレンタル代が足りないので、ずんだカフェ案は廃案にします」と通告されずに済む……ふふふ……。
(過去に何かあったのね……)
うん!ヽ(*^ω^*)ノ 今日みんなをうちに招いたのは、試しにずんだカフェをシミュレーションしようと思ったからなのです!!
「ほーら見て!!」という掛け声とともに、ずん子がゆっくりと『ずんだパイル・ミリオネア』のフタを開いていきます。マンガなどで「アタッシュケースを開くと中に金銀財宝が詰まっていて、覗いた人の顔に金色の光が降り注ぐ」演出がよくありますが、今が、まさにそんな感じでした。
黄緑色、裏葉色、あるいは「ずんだ色」――。なんと形容するのが正確か分かりませんが、『ずんだパイル・ミリオネア』の中から、燦然と輝くずんだが姿を現わしたのです。これにはきりたん、めたん、そらさんも、言葉を失ってしまいました。
ふわっと漏れたずんだの香りを嗅いで、ずん子は反射的に踊り出しました。ちなみに、ずんだが詰まっていると言っても、詰めすぎてはいません。ぎゅうぎゅうに詰めてしまうとずんだの食感が失われてしまいますからね。
……と、いうわけで! 「お試しずんだカフェ in ずん子部屋」をやってみよう!ヽ(*^ω^*)ノ
『お~♪』
(――30分後――)
部屋の外に待機していた「お客さん役」のきりたんに、「準備できたよ~(o´∀`o)ノ」という、ずん子の声が届きます。きりたんは「じゃあ、入りますね」と伝えると、一応、ずん子の部屋のドアをノックしてから、ドアを開けました。
――!!??
――は、はい。(メイド服まで用意してあったんですね!?)
そう。帰り道でもそらが言ったとおり、学園祭でのクラスの出し物なので、さすがにずん子のためだけに「ずんだカフェ」に徹するわけにはいきません。そういう理由から、出し物はメイドカフェも兼ねているので、店員さん役のそら、ずん子、めたんはみんな、メイド服を身につけています。
最初に接客してくれたそらさんは、大人の女性の魅力をふんだんに盛り合わせたミニスカメイド服(と、オーバーニーソックス)でした。ぽわぽわとした彼女の雰囲気と、歩くたびに揺れるフリルのふわふわ感が見事にマッチして、訪れたお客さんを癒してくれます。
『ではぁ、こちらのお席にどうぞ~♪ といってもぉ、ご主ずんさまの学習机なんですけどぉ~♪』(フリフリ
すっ、と椅子を引いて座りやすくしてくれる気遣いまでパーフェクトです。きりたんがそらさんの完璧なメイドっぷりに感心しながら席に着くと、彼女の横から唐突に、控えめに、そしてぶっきらぼうに、紙で作られた即席のメニューが差し出されました。
――ど、どうも……。(て……照れている!? あのめたんさんが!?)
そらさんとは対照的に、めたんのメイド服はロングスカート。いわゆるオードソックスな「メイド服」です。彼女は普段からロリータファッションを着ているので、フリフリの服には慣れているのかと思いきや、なんと、心なしか頬を染めているのです。あのめたんが。
(――そ、そうか……。メイド服は黒、そして彼女の普段のファッションは白ロリ……。両者は彼女の中では正反対の存在なんですね……。しかも、普段はイタコ姉さまに対してすら敬語を使わない彼女のこと、誰かに仕えるというシチュエーションにとんでもない羞恥心を抱いているのでしょう……)
両手を身体の前に据え、「ちょこん」と待機しているめたんのシルエットにはロングスカートが似合います。きりたんは彼女を焦らすようにわざとゆっくりメニューをめくったあと、一つしか書いていない「ずんだ餅 300円」を注文しました。
……かっ、かしこまりました、お嬢様。ただいまお持ちいたします。
ぺこりと頭を下げためたんが、か細い声で「ずんだ餅入りました……」と伝えます。それをそらさんがのほほんと復唱し、二人の視線が、奥で待機していたずん子へと集まりました。
きりたんが反射的に立ち上がります。――そう。ずん子はなんと「割烹着」を身につけているのでした。
(――ずっ……ずんねえさまの割烹着!? 確かに割烹着は「日本版メイド服」と呼んでも差し支えない存在とはいえ、「メイド喫茶」を期待してきたお客に割烹着は飛び道具すぎる! し……しかしずんねえさまの雰囲気と顔つきがそれを超越する「お仕え感」を醸し出して……これは……)
(――す、素晴らしい……。後ろで束ねた緑の髪が揺らめくさまも、前掛け代わりのエプロンが独立して揺れるさまも、そして着物を乱さないようにしずしずとずんだ餅を作るさまも――すべてが和風美人の粋を体現していると言っても過言ではない!!)
という感じできりたんが『孤独のグ○メ』をしている間に、ずん子は粛々とずんだ餅を作っていました。
彼女が手元に持っていた矢を凍っているずんだに突き刺すと、なんとちょうど一人前のぶんだけずんだが自然解凍され、矢尻にくっついた状態で取り出されるのです。あとはいつものとおり、「ずんだアロー」でそれを餅に向かって射るだけ。わずか20秒足らずで、一人前のずんだ餅が完成しました。
『お待たせいたしましたぁ、お嬢さま♪ お餅のずんだ添えでございます~♪』
『ええ~♪ そうですねえ~。それにしてもぉ、「ずんだアロー」にまさか解凍機能、それも「ずんだ限定で自然解凍と同じ効果をもたらす機能」まで備わっていたとはぁ、予想外でした~♪』
……そ、それよりわたくし、早く元の姿に戻りたいんだけど……///
一名を除いて、概ねこの練習の結果には満足のようです。ずん子は「じゃあ、これにて練習しゅーりょーヾ(*'∀`*)ノ」と宣言すると、にこにこ顔でみんなの分のずんだ餅を作り始めました。
(――5分後――)
なに?(。・∀・)ノ
自然解凍のずんだをおいしくほおばっていためたん(結局メイド服のまま)が挙手をして発言権を求めます。ずん子に指名された彼女が立ち上がると、メイド服のロングスカートが空気を含んでふわっと膨れ、そして吐き出してしゅっと垂れました。さすが、普段から履き慣れているだけあります。
こんなクソ重い『ずんだパイル・ミリオネア』を、どうやって学校まで持っていくの? あとはそれさえクリアできれば、たぶん問題なくずんだ餅を提供できるような気がするけど。
ああ(o'∀'人)……それならですね……(てくてく
ずん子もずん子で割烹着のエプロンをふりふり、でも歩幅は小さく着物を乱さないようにと、いつもの調子で歩きます。「その質問も予想済みだよ」とでも言わんばかりのドヤ顔をした彼女はそのまま「ある人」の後ろに回り込むと――。
ぽん、と、そらさんの肩に手を置きました。
――……ああ! 「反重力装置」!
きりソンくん、その通り!ヽ(≧▽≦)ノ 「反重力装置」で重量を0にできるそらさんに手伝ってもらえば、『ずんだパイル・ミリオネア』くんはどこまでも行けるのです! そう! 「ふる女祭」だろうと! 秋葉原だろうと!ヾ(*'∀`*)ノ
『なるほど~♪ もちろんご協力しますよぉ、ご主ずんさま♪ おいしいずんだ餅のお礼です~♪』
そらさんは二つ返事で引き受けると、ミニスカメイド服のまま、胸をふよんと震わせて立ち上がります。ミニスカートのメイド服はどうしてもコスプレ臭が抜けきらないものなのですが――モデル体型な上に、「ご主ずんさま」呼びをするそらさんが身につけると、どこか本格的に映ります。
――ともあれ、彼女は頭の惑星を発光させて「反重力装置」の威力を高めると、巨大な「ずんだパイル・ミリオネア」にそっと手を触れ、まるで重量などないかのように軽々と持ち上げました。そして、彼女は苦もなくずん子の部屋の出口へと向かい――。
…………あ?( ゚д゚ )
――がつん! と、ドアに引っかかりました。
雷撃が落ちたかのようにショックを受けるずん子の割烹着が乱れ、左肩が露出します。その傍らでなんともいえない表情をしているのがきりたん、堪えきれずに噴き出したのがめたんでした。特にめたんは、笑いすぎて立っていられなくなったのか、スカートを円状に広げて部屋の床へと座り込みます。
ひっ……あはははっ! ほ……報告しなくていいから! 見れば分かるから! ぶふっ!
そらさんが色々と向きを変えて試しますが、そのたびにドアに引っかかります。『ずんだパイル・ミリオネア』の大きさは、まさにずん子のずんだへの愛が具現化したかのような大きさでたいへん気合が感じられてよろしいのですが……あまりに、あまりに大きすぎるのです。
――ず……ずんねえさま……。
厳然たる事実。予期していなかった落とし穴。まさかの展開を受けて、ずん子の身体に、ここ一週間働き通してきた疲れがどっと押し寄せます。彼女は目の前の現実を認めたくないかのように頭を振ったあと、ふらふらと自分のベッドへとすりよって――
……あとは頼んだぞ……きりソンくん……(´;ω;`) 君の名推理で……私に代わって『ずんだパイル・ミリオネア』をこの部屋から出してくれた……ま……え……(バターン
――倒れました。
――ずんねえさまあああああああああああああっ!?
――その後、目を覚ましたずん子は最終手段として家そのものを「ふるさと女学院」まで持っていくことを提案しましたが却下。あまりに悲惨な展開に同情したイタコ姉さまによって普通サイズのクーラーボックスを恵んでもらいますが――それはまた、別のお話。
――おわり―― (※今回もまとめのコメント欄にて感想をお待ちしています! また、まとめのコメント欄にずん子のイラストを投稿してくださる方も募集中です! コメント欄に投稿していただいたイラストに限り、公式から転載させていただく可能性がありますので予めご了承ください!)
次回はこちら http://inove.jp/ivsid1415



















