ボクと契約してイタコ少女になってよ! ※ただし美少女に限る
「魔法少女」といえば「使い魔」がつきものです。戦闘をサポートし、変身の手順を教え、やがて少女とのあいだに信頼関係を築いていく――。日常に生きていた主人公を非日常へと連れて行く導き手、それが使い魔なのかもしれません。そう考えると、浦島太郎の亀とか、不思議の国のアリスの白ウサギとかに、そのアーキタイプを見いだすことができるかもしれません。表題のセリフは、そんな「非日常への導き手のお約束」を逆手にとったという意味で、日本の「魔法少女の使い魔文化」の、他国に類を見ない成熟を感じさせる一言ですね。
――ビュオオオオオ……。
横殴りの吹雪が吹き付けます。「特訓」という名目でずん子たちが訪れた青森・秋田の世界遺産、「白神山地」は、横穴を掘るだけで小さなかまくらが作れるほどの雪に覆われていました。
かまくらの中ではしゃいでいたしのびとずん子のテンションに、つるぎとうさぎがついてきません。自然の要塞としてあちこちに見所がある白神山地ですが、雪に覆われる季節は通常、通行を許可されていません。そう、要するに――。
――とてもじゃないですが、「特訓」なんていう気分にはなれないのでした。
(――同じ頃・白神山地入口付近――)
めたん、そらさん、きりたん、そしてイタコ姉さまの四人は、大行列ができている新駅ビルのスタバを横目に、青森側から白神山地に入ろうとしていました。雪が入り込まないよう重装備のそらさんのアンドロイド・ボディは耐水性がないので、最も辛そうです。
どうして分かるのか、三人の隣でじっと目を瞑っていたイタコが、溜息をついて森の奥を見やります。なんと、彼女は普段どおりのイタコ服のまま、特に防寒対策もしていないようです。
なんの躊躇いもなく山中へと足を踏み入れようとするイタコ姉さまときりたんを、めたんが呼び止めます。彼女の瞳には、目の前の森はまさに『迷宮――白い地獄――』に映っているのかもしれません。百メートル先すら見通せない状況で、十三万ヘクタールの山地へ踏み込むのです。
背中のきりたんぽのせいでなんだかよく分からない形に膨らんだ防寒着のずれを直しながら、きりたんが自信満々に言い切りました。自信はあっても寒いものは寒いのか、きりたんぽの排熱機構をプシュプシュと稼動させて服の中に熱風を起こしているせいで、やたら味噌くさいですが。
それに対して、いつもの白い装束に白い肌、そして銀色の髪をそのまま雪に晒しているイタコ姉さまは、その紅の瞳だけが、白銀の視界にぽっかりと浮かんでいるように見えます。あまりに景色に馴染んでいるので、ちょっと油断すると、誰もいない空間から声が響いているのかと思うほどに。
(――回想――)
ぷにぷにとした小さな手が、焼きたてのお餅を何かに和えています。遊びに来た青森の親戚の家の庭先、子どもの手で作られたのが一目で分かるいびつなかまくらの中で、九歳のずん子が、創作料理に励んでいました。
できたー!!(パンパカパーン ずん子とくせー! ずんだそうさく料理、だい85弾!! あっつあつのずんだスープにおもちを入れた、ずんだしるこです!(=ず・ω・だ=)ノ
――……………………ぱちぱちぱちぱち。
ずん子の陰に隠れるようにして彼女の料理を見守っていたきりたんは、なんと当時三歳。背中の「切り」たんぽはまだ切れていないまま、遠目から見るとちくわのような、完全な「たんぽ」の姿を保っています。
……イタコねえさまっ!! どうぞっ!!∑d(゚∀゚d)
そして――ずん子が満面の笑顔で創作料理を差し出した先には、「黒髪」「黒目」の、気の強そうな美少女が座っていました。ずん子たちが散らかした道具を片付けつつ、火元の管理にその黒い瞳を注いでいた彼女――イタコ姉さまは、差し出されたお椀を見て、戦慄します。
ず、ずんちゃんの創作料理ですか……(;゚∀゚) うわー! おいしそうですねー!
食べてくださいっ! ねえさまっ!(キラキラ
は、はーい! 食べますよー!(o'∀'o)ノ 食べます食べます……食べ……あっ!∑(・ω・ノ)ノ! ほらほらずんちゃん、きりちゃん! お外に雪が降ってきましたわ!!
当時から、ずん子が作った創作料理は、真っ先にイタコ姉さまに差し出されていました。黒と緑が混じったおどろおどろしい煙を放つ目の前のお椀を見て、ずん子の創作料理による84回中84回の撃墜記録がフラッシュバックしたイタコ姉さまは、慌てて、彼女たちの視線を逸らします。
――……………………?
わー!(o´∀`o)ノ ほんとだ! ゆーきやこんこ、あーられやこん……こ……!?∑(゚ω゚ノ)ノ
――ビュオオオオオオオオオ……。
あ、あら……?( ゚ω゚;) ゆ、雪がみるみるうちに強く……。しかもなんか、まわりの景色も変わってきてるような……。
……へくしょ! さむい! さむいですイタコねえさまっ!!(`・ω・´)
ちょっ……∑(゚д゚;) え!? なんですのこれ!? いつの間に山の中に……!?
幸いだったのは、かまくらの出口が風下を向いていたことでしょう。状況を確認するために頭を出したイタコ姉さまの「黒髪」があっという間に白い雪に包まれるほどの吹雪です――親戚の家の庭にいたはずの彼女たちの身に、信じられない現象が起こっていました。
……?( ゚ω゚;) きりちゃん? 白神山地って、なんで……?
――……………………たんちゃんが、そう言っています。なにかふしぎな力に呼び寄せられたみたいだ、って。
ずん子に寄り添ってぼそぼそと囁きながら、きりたんは小さな両手をめいっぱい伸ばして、「ぱ○ぱふ」の要領で、背中の「切れてない」たんぽをべしべしと叩きました。当時の、今と比べて相対的に純粋だった彼女は、背中の「切れてない」たんぽと会話ができたのです。
へ、へー……。不思議な力で……。それはそれは、すてきなことですわね……(*'ω'*)
…………………………………………( ´Д` )
…………なんじゃそりゃああああああああああああああああああっ!! ですわ!!
(――再び現代・ずん子たちのかまくら――)
ずん子も、つるぎたちに向かって自分の身の上話を始めていました。
(――再び過去――)
(ど、どうしましょう……(ノω=`) 状況がさっぱりつかめませんわ。でも、あたしが泣いたら、ずんちゃんたちをますます不安にさせてしまいますし……。うーん、うーん……。あ、そうですわ!!)
目を腫らして泣いているずん子ときりたんを前におろおろするだけのイタコ姉さまの顔つきが、何かを決心したように一変します。彼女は、手元に持っていたお椀を口元へと運ぶと――。
……南無三ッ!!ヽ(`Д´)ノ
ね、ねえさま!?∑(゚д゚*)
――と叫んで、一気に「ずんだしるこ」をかき込んだのでした。
……!!?? お、おいしいですわ!?(≧▽≦)ゞ
えっ!?∑(゚◇゚ノ)ノ ほんとうですか!?
本当においしいですわ、これ!(*'ω'*) ほら、ずんちゃんときりちゃんも食べてみてくださいな!
色こそ微妙でしたが、その温かな汁粉はイタコ姉さまの表情を綻ばせるのに十分なコクと、甘みをたたえていました。自分でも信じられなかったのか、イタコ姉さまの反応に目をまん丸にしたずん子が、おそるおそる、お椀を口に当て、傾けます。
……わっ!(ノ∀゚*) ほんとだ! ほら、きりたんも!
――……………………うまい!(テーレッテレー
わー!!(≧▽≦)ゞ やった! ずんだそうさく料理がはじめて日のめを見ました!!
(ずんちゃん……喜ぶのはいいんですけど、今まで自信のない料理を食べさせられ続けたあたしって一体……(*-∀-)ゞ でも、ここぞという時は決める女ですわね、ずんちゃん。もしかしたら、彼女はすごい逸材なのかもしれませんわ……)
ずん子ときりたんの顔に活力が戻ってきます。急いでレシピのメモを始めるずん子と、一心不乱にずんだ汁粉を食べるきりたんを見て、イタコ姉さまはほっと、胸をなで下ろし――。
――と、その時でした。
\……おおっ! こいつぁうめえなァ!! わざわざこの白神に呼び寄せた甲斐があったぜェ!!/
声!?∑(゚ω゚ノ)ノ だ、誰ですの!?
どこからともなく、三人の頭の中に、エコーがかかったような声が響いてきたのです。慌てて周囲を見回したイタコ姉さまは、きりたんが持っていたはずのお椀を、何か巨大な銀色の生き物が貪っていることに気付きます。
ぎ、銀色の、ネコさん、ですの……?∑(゚д゚*)
キツネ――。そう、キツネでした。銀色の毛並み、銀色の耳、そして赤い瞳に、「二本の」尻尾。口調こそ威勢がいいですが、体はどこか弱々しく見える、美しい一匹のキツネです。
うわー!(o'∀'人) 尻尾が二本あるよ、このキツネさん!
\ついさっきまで一本だったんだけどな。お嬢ちゃんの汁粉のおかげだァ。これが無かったら、飢え死にしてたところだぜ……。アンタの作るずんだには、不思議な力があるなァ……。というわけで、オレと契約しねェか、そっちのお姉ちゃん?/
……あたし!?∑(゚◇゚ノ)ノ その話の流れで、なんであたし!?
\ん? だってよ、このお嬢ちゃんのずんだ創作料理を真っ先に食べれるだろ?/
「何言ってんだコイツ」という目をして首を傾げる銀色のキツネが、前足を器用に使って地面に「契約書」のようなものを書き始めます。
\それに、アンタに拒否権はないぜェ? というか、もう半分契約したようなもんだしな。少なくとも契約分の支払はしてもらわねェとよォ/
いやいやいや、身に覚えがありませんわ。あたしたちがあなたと、いったいなんの契約を……(。・´_`・。)
\オマエたちの頭が「受信」してるだろ? オレの……魂の叫びをよォ!! そいつの受信料代わりに――俺と契約して、イタコ少女になってくれよォ!/
わぁいテレビだけじゃなく受信できる機器があれば全部に料金が発生しますわー! ……じゃなくて! これはあなたが発信した電波でしょうが!(`ε´*) あなた、何者なんですの!?(*`ロ´ノ)ノ
\フッ……/
「契約」の準備のためか、全身を銀色に光らせながら、銀色のキツネは、自分に酔っているかのように耳をぴくぴくさせ、白い歯をきらりと輝かせます。そして、イタコ姉さまの背中にがっしりと取り憑くと――。
『契約開始』、と、そう呟いたのでした。
ズオオッと、吹雪の中にあってなお凄まじい轟音を響かせながら、二尾の銀狐がイタコ姉さまの体内へと吸い込まれていきます。黒い瞳、黒い長髪の無垢な体は、キツネの妖力を取り込んで、ダイヤモンドのような輝きを発していました。
……ね、ねえさま……((( ;゚Д゚)))
――そして、その光が収まるころ。イタコ姉さまの姿は、すっかりと変わってしまっていたのです。
『ネコじゃねえ!! キツネ耳だ!!』……………………く、口が勝手に何か言いましたわ!? ちょ、あたしの体を勝手に使わないでくださいな!!
銀髪、赤目、キツネ耳――そして、体内に憑依させた誰かの魂と会話する「イタコ」の能力。あまりに急激な変化に思考回路が追いつかないままに、妖狐が畳みかけます。考える隙を与えない。悪質セールスの常套手段ですね。
え!? なんですって!?∑(゚д゚*) 『契約完了だ、東北イタコ。今ならクーリングオフ権の放棄と引き替えに、この白神山地を脱出させてやるぞ。さ、サインしろ』!? お、横暴ですわ……(;´Д`)
しかし、他に選択肢はありません。消費者センターに訴えようにも、こんな山のど真ん中で、しかも相手が人ならざるものとあっては、どうしようもないのです。イタコ姉さまはキツネ耳をピクピク震わせながら、妖狐に言われるがまま、雪の上に自分の名前を記しました。
ぐっ、ぐぬぬぬぬぬぬぬ……!! い、今は引きます。しかし――そっちがそう来るなら、あたしにだって考えがありますわ!!(#゚皿゚)
――……………………ねえさま?
(――現代・ずん子たちのかまくら――)
――ま、本人が楽しそうだからいいじゃないですか(笑)
――その後、調子に乗ったイタコ姉さまがそらさんMk=8のパーツ回収を失念したせいで、「白神山地に人の頭が浮いてる!?」とちょっとした騒ぎになりますが、それはまた、別のお話。
――おわり―― (※今回もまとめのコメント欄にて感想をお待ちしています! また、まとめのコメント欄にずん子のイラストを投稿してくださる方も募集中です!)
次回はこちら http://inove.jp/ivsid1430



























