ボカロ/ボイロ

東北ずん子ノベル『幼女きりたんはピュアで汚れなき小学五年生』

なんというピュアさ!

タグ:東北ずん子 SS アイノベ アニメ

なれーたーずん子
東北ずん子ノベル『幼女きりたんはピュアで汚れなき小学五年生』
なれーたーずん子
――はじまります!
本文画像
なれーたーずん子
――少し、昔話をしましょう。きりたんがまだ6歳だったころ、唐突に訪れた哀しいお話です。
なれーたーずん子
カナカナカナ……と、ひぐらしの鳴く声が降り注ぐ夕暮れ時。幼稚園生活最後の夏休みを過ごしていた少女――東北きりたんは、一人、自宅の縁側に座って、茜色に染まる空を見上げていました。
東北きりたん
――はあ……きょうも、ずんねえさまはすてきでした。
東北きりたん
『――すてきでしたね……』
なれーたーずん子
一人でいるはずのきりたんの言葉に、誰かが応えます。近くにイタコ姉さまはいませんし、幻聴を聞くような時間帯でもありません。なにより、自分の呟いた言葉に返事が返ってきたことに、きりたん自身がまったく驚いていません。――まるで、それが自然な姿とでも言うように。
東北きりたん
――ねえ、たんちゃん?
東北きりたん
『――……なあに、きりたん』
なれーたーずん子
「たんちゃん」。まだ小さなきりたんの口が、そう紡ぎます。彼女の視線は、相変わらず夕焼けの空に注がれていて――当然ですが、その先に人影はありません。
東北きりたん
――わたしって、どうして「きりたん」なんだろ……?
東北きりたん
『――……!』
なれーたーずん子
きりたんの問いかけに、不思議な声の人――たんちゃんが息を呑みます。たぶん女の子であろう彼女は、しかし、すぐに態度を取りつくろうと、一つ、大きな溜息をついて、『――そうですね』と、笑いました。
東北きりたん
――だって、すごくふしぎ。わたしは、きりたんぽじゃないもの。きりたんぽって、切れてるからきりたんぽなんだよ。きょう、ずかんでみたの。
なれーたーずん子
そう言うと、きりたんは自分の背中にある二本のきりたんぽ――いえ、「切れて」いないのですから、「たんぽ」と呼ぶべきでしょう――を、プルプルと震わせました。みずみずしいその「たんぽ」は、彼女の背丈の2倍以上あります。――それに、先端に穴も開いていません。
なれーたーずん子
彼女の背中の二本の「たんぽ」は、うっすらと発光しています。――そう。「たんちゃん」とは、彼女の背中に宿ったきりたんぽの精の声だったのです。
東北きりたん
『――うん。そうね。とうとう、この日が来てしまったのね……』
東北きりたん
――…………たんちゃん?「このひ」って……。――……きゃっ!?
なれーたーずん子
ぼーっと空を見上げていたきりたんの頭。その両脇を、後方から、「何か」がものすごい速度で掠めていきました。驚いたきりたんでしたが、慌ててその正体を確認すると――なんと、包丁です。
なれーたーずん子
二本の「包丁」は鋼の切っ先を前方に向けたまま、きりたんの目の前で静止して、ゆっくりとバックし――彼女の漆黒の髪の中に、がしゃん、と、納まりました。包丁の先には、わずかではありますが、きりたんぽの肉片が付着していて――彼女の顔が、真っ青になります。
東北きりたん
――なにこれ……!?たんちゃん、ほうちょうに切られちゃったの!?
東北きりたん
『――きりたん。お別れのときです。この日が来てしまったこと――少し寂しいけれど、でも、とても嬉しい』
なれーたーずん子
頭の異物感。そして「切られてしまった」たんちゃんのことを気にかけていると、再び、たんちゃんの声がしました。いつもと変わらない、優しい声です。
なれーたーずん子
包丁によって真っ二つになったたんちゃんは、上側の部分に意思が残っているようでした。ある意味で「自由になった」彼女は、発光しながら、ふよふよと、きりたんの前に浮遊してきます。 
本文画像
東北きりたん
――たんちゃん、そのすがた……!! 穴が開いてるよ!? それじゃあまるで……
なれーたーずん子
――本当のきりたんぽみたい。そう言いかけて、きりたんは、自分の背中の「たんぽ」にも穴が開いていることに気がつきました。
東北きりたん
『――ああ、きりたん……。ようやくあなたの瞳が見られました。いつもは背中にいるばかりで、あなたと目を合わせることなんてできませんでしたから……』
東北きりたん
『――きりたん。これでやっと――「きりたん」になれましたね。あなたが、大人になった証拠です。さあ、きりたん。秘められし力を解き放って、本当の「きりたんぽ」になる時が来たのです』
東北きりたん
――たんちゃん……? なにをいっているの?
なれーたーずん子
そして、たんちゃんはそっと、かつて自分の半身だったもの――「きりたんのきりたんぽ」に手を添えました。すると、彼女の背中から、香ばしいお味噌の匂いが漂ってきます。
東北きりたん
――たんちゃん? なにをしたの? なんか、せなかがムズムズするよ? たんちゃ……!!??
東北きりたん
『――きりたん砲、ファイア』
なれーたーずん子
上半分になってしまった「たんちゃん」が、そう囁くと。ムズムズしていた彼女の背中に、小さな爆発が起こります。初めての「きりたん砲」は、紅の空を吹き飛ばさんかのような爆風を周囲に巻き起こし――驚いたきりたんが目を見開いたころには、「たんちゃん」の姿はありませんでした。
東北きりたん
――……たんちゃん?
東北きりたん
――たんちゃあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁん!!
なれーたーずん子
(――回想おわり――)
なれーたーずん子
ジリリリリリリリリリリリリリ……
なれーたーずん子
気怠い夏の日。湿度は70%を超え、気温も30度に近づこうかという真夏の東北家に、けたたましい目覚まし時計の音が響き渡ります。
東北きりたん
――たんちゃ……はっ!?
なれーたーずん子
ちょっとだけ寝具の襦袢がはだけてしまったきりたんが、呻きながら目を覚まします。
なれーたーずん子
「たんちゃん」。かつてきりたんの親友であり、半身だった存在。きりたんが彼女に会えるのは、今や夢の中だけになってしまいました。
東北きりたん
――……今でも信じられませんね……。たんちゃん、どこへ行ってしまったのでしょうか……。
東北イタコ
きりちゃーん、おはようですわ(o'∀'人)お仕事行ってきますから、お留守番よろしくお願いしますわね。
なれーたーずん子
きりたんが額の汗を拭っていると、ドアの向こうからひょっこりと、イタコ姉さまが顔を出します。その声につられて時計を見ると、午前9時でした。普段だったらきりたんも焦る時間なのですが、彼女の小学校はもう夏休み。まだまだゆっくりできます。
東北ずん子
私もバイト行ってくるね、きりたん。ごはんはラップして冷蔵庫に入れてあるから、チンして食べてねヽ(´∀`)ノ
なれーたーずん子
イタコ姉さまの背後から、今度はずん子の声が聞こえました。彼女たちはひらひらと手を振ると、きりたんの部屋の扉を閉めます。扉の向こうから二人分の足音が響き、玄関の門が開く鉄の音が聞こえたかと思うと――、再び、静寂が訪れました。
東北きりたん
――静かですね……。ここのところ騒がしい日が続いていたので、少し落ち着きます。
東北きりたん
(――しかし、先程まで見ていた夢のせいか、どうも、静けさが寂しく感じられてしまいますね。昔は、一人であっても話し相手がいましたし……)
東北きりたん
――たんちゃん……。必ず探し出します。
なれーたーずん子
きりたんの瞳には、燃えるような決意の輝き――ずん子がずんだの普及に命をかけているときと同じ、あの輝きが、灯っています。生き別れの少女を捜し出すこと。それが、小さいなりに背負っている、きりたんの使命なのです。
なれーたーずん子
――ですが。
東北きりたん
――さすがに寝覚めが悪いですね。あと5分だけ寝ましょうか。二度寝は新しい夢を見やすいと言いますし。もう一度、たんちゃんに会ってきましょう。
なれーたーずん子
その輝きも僅か一瞬。きりたんはいつものクールなまなざしに戻ると、ぼそっと自分に言い訳して、頭から布団を被りました。幼くて体温の高いきりたん自身のぬくもりが、まだ布団に残っています。
東北きりたん
――おやすみなさーい。
なれーたーずん子
(――8時間後、17時――)
東北ずん子
ただいま!ヾ(´・∀・)ノ きりたん、お留守番ありが……うおぁっ!?∑(゚ω゚ノ)ノ 
本文画像
東北きりたん
――……うーむむむむ……あと5分……。
なれーたーずん子
ずん子がバイトを終えて帰ってきても、きりたんはまだ寝ていました。彼女の枕元には、PSPやら3DSやら、そういったものが転がっています。恐らく、布団から出ていないのでしょう。
東北ずん子
き……きりたん!((( ;゚Д゚)))そろそろ起きないと、生活習慣がまた元に戻っちゃうよ!?せっかく1学期でお昼型になったのに……。
東北きりたん
――ぽぁ? ずんねえさま? ……おなかへりました。
東北ずん子
うん。食べてないから当たり前だよね?(´;ω;`)
なれーたーずん子
布団を蹴り飛ばして、ずん子が慣れた手つきできりたんを引きずり出します。「いつものこと」と言ってしまうと哀しくなりますが、東北家ではよく見る光景です。きりたんは、低血圧なので寝起きが悪いのです。
東北ずん子
(ちゃんと起きてたから油断してた……( ;∀;) きりたん、休みが続くと、すぐ自堕落な生活に戻っちゃうからなあ……)
東北ずん子
(もしかして……まだ、たんちゃんのこと引きずってるのかな?)
東北きりたん
――ぐぅ。
東北ずん子
寝ないで――――っ!!。゚ヽ(゚`Д´゚)ノ゚。
なれーたーずん子
(――7時間後、24時――)
東北きりたん
――ぽぅ。
東北きりたん
――寝れない。ひるねしすぎました……。
なれーたーずん子
当然です。
東北きりたん
――どうせ寝れないのですから、少し本気を出して、たんちゃんの行方でも調べてみましょうか。夢で会えると言っても、しょせんは記憶の中の彼女ですからね。
なれーたーずん子
きりたんは再び瞳を燃やすと、意気込んでPCのスリープを解除しました。すぐにネットを立ち上げ、ホームに設定したGoogleの検索画面へと飛びます。そして彼女は、腕を組んで検索ワードを考え始めると――。
東北きりたん
(――思い付きませんね。とりあえず、お気に入りのサイトの更新状況でも徘徊しましょう。たぶんそのうちにアイデアが降ってくるでしょうし)
なれーたーずん子
――カチカチと、サイトの巡回を始めました。
なれーたーずん子
(――3時間後、早朝3時――)
東北きりたん
(――『くっそわろた』……と……)
東北きりたん
――はっ!? もう3時!?
東北きりたん
(――ま、まずいですね。結局何もしてません……。ですが、まだ朝まで4時間くらいありますし、今から本気を出して調べれば、朝までには何らかの進展が見られるでしょう)
東北きりたん
(――ですが、画面を見続けていたので少し目が疲れましたね……。軽くゲームでもして、少し、気分転換しましょうか)
なれーたーずん子
きりたんは小さく伸びをすると、倒れ込むように枕に顔を埋めました。彼女の部屋には、枕から手が届く範囲内に色んなゲームが置いてあります。夏休みは大作ゲームが相続いて出る時期ですので、どんどんクリアしていかないと積みゲーになってしまうのです。
東北きりたん
(――一ターンだけ進めましょう。一ターンだけ……。あ、新しいイベントフラグ立った。続きが気になりますね……。もう一ターンやりましょうか)
なれーたーずん子
東の空が白んできました。ですが、彼女の部屋の遮光カーテンはばっちりと閉じています。きりたんはベッドにうつ伏せになって、両足をぱたぱたと振りながら、口元に笑みを浮かべてゲームを進めていました。
なれーたーずん子
(――14時間後、夕方18時――)
東北きりたん
――むにゃ……たんちゃん……。
なれーたーずん子
きりたんは、寝ていました。完全に昼夜逆転生活の完成です。本当にありがとうございました。
なれーたーずん子
ばたん!と、彼女の部屋の扉が開かれます。見かねたずん子とイタコ姉さまが、彼女を叩き起こしにきたのです。
東北ずん子
きっりたーん!!!O(*>▽<*)o ……やっぱり寝てる!! お外に出ようね!(#゚Д゚)! 行き先は用意してあるから!
東北イタコ
きりちゃん! いつまでも寝ててはダメですわ!(`ε´*) 大事なのは1に運動、2に運動、3、4がなくて5に感動ですわ!
東北きりたん
――ぽぁ!? すいません、ねえさまがた。さっきゲームをクリアして、今寝たばかりなので……。
東北ずん子
問答無用でーす!(#゚皿゚) もうちょっと粘って、21時になったら寝よう! お散歩の行き先はすぐそこだから、私が連れて行ってあげるね!(σ゚∀゚)σ
なれーたーずん子
布団から出ようとしないきりたんの首根っこを掴んで、ずん子は「ずんずん」と大股で歩きます。きりたんは引きずられながらも、なんとか彼女の手を振り払おうと、身をよじります。
東北きりたん
――いーやーでーすー……。せっかくいい夢が見られそうなのに……。
東北ずん子
夢でばかりたんちゃんに会えても嬉しくないでしょ?(゚´ω`゚) まだどこかにいることは確かなんだから、ちゃんと探しなさい!
東北イタコ
毎年あたしが口寄せを試みてるんですのよ。うまくいかないってことは、まだどこかにいるってことですわ!(o'∀'人)
東北きりたん
――うー……。明日になったら本気出しますから。
なれーたーずん子
抗弁している間にも、きりたんの身体はずりずりと引きずられていきます。玄関まで連れてこられたあたりで、彼女はとうとう諦め、自分の草履を履きました。
東北ずん子
すぐそこの山にいくよ! 足腰も鍛えられて一石二鳥(*´∀`*)!
東北きりたん
――ぽぅ……。はい……。
なれーたーずん子
と、いうわけで、ずん子一行によるハイキングが始まりました。唐突な山登りに、一日中寝ていたきりたんの足腰が悲鳴を上げますが――後方で、「逃げたら誰かの霊を取り憑かせてでも登らせますわよ」という雰囲気を出しているイタコ姉さまがいては、逃げられません。
東北イタコ
さ、つきましたわよ! きりちゃん!ヾ(*'∀`*)ノ
東北きりたん
――つ、疲れた……。ニートになんという仕打ちを……。
なれーたーずん子
最後の階段を上りきった先にある芝生のじゅうたんに、きりたんが倒れ込みます。
東北ずん子
見て見て! きりたん、きれいな夕焼けでしょう?(〃ω〃)
東北きりたん
――ほとんど暮れかかってますけどね……。
なれーたーずん子
きりたんの言うとおり、夕焼けはもうほとんど残っていません。それでも、林の向こうから聞こえてくるひぐらしの声と、夕焼けです。きりたんは、なんとなく――昨日夢見た「あの日」を思い出してしまうのでした。
東北きりたん
――……まさか、コレを見せに?
東北イタコ
それだけじゃないですわ!ヾ(*'∀`*)ノ
なれーたーずん子
ふわり、と。――彼女の視界を横切ったのは、一筋の光。それが一瞬だけ……「あの人」に見えて、きりたんは思わず立ち上がってしまいました。
東北きりたん
――この光は……。
東北ずん子
蛍だよ!ヽ(≧▽≦)ノ きりたん! ずっと前、「見てみたい」って言ってたじゃない!
東北きりたん
――そんな、昔の戯れ言を……覚えていてくれたのですか。
なれーたーずん子
ふわふわと、きりたんの目の前を数本の光の軌跡が交錯します。あまりにも美しいその光景に、きりたんはつい、目を逸らしてしまいました。
東北きりたん
(――わたしが一日中グダグダしているあいだに、ねえさまたちは……わたしのために、近所で蛍が観られる場所を探してきてくれていたのですね……)
東北きりたん
(――それなのに、わたしは……わたしは)
東北きりたん
――ふぇっ……(´;ω;`)
東北ずん子
き、きりたん……!?∑(゚◇゚ノ)ノ
大丈夫、大丈夫だからね!
東北きりたん
――うう……ぐすっ……。゚(PД`q*)゚。
東北イタコ
きりちゃん……!?(´;ω;`) よしよし、よしよしですわ。
なれーたーずん子
内面の葛藤が抑えきれなくなって、とうとうきりたんは泣き出してしまいました。詳しいことはさっぱりのずん子とイタコ姉さまでしたが、普段はクールな妹の大泣きを前にして、すかさず慰めに入ってあげました。
なれーたーずん子
二人のお姉さまの優しい心遣いが、きりたんの心をゆっくりと、溶かしていきます。
なれーたーずん子
(――10分後――)
なれーたーずん子
すっかり落ち着いたきりたんは、二人のお姉さまと手を繋いで、泣き腫らした目で、蛍を眺めていました。くちゃくちゃになってしまった彼女の表情は、それでも、どこか晴れやかです。
東北きりたん
――ふふっ……。きれいですね。
東北イタコ
そういえば、どうして急に「蛍が見たい」なんて言い出したんですの?(´・д・`)外界のことには、あまり興味がないはずでしたのに。
東北きりたん
――どうしてでしょうね。なんとなく……懐かしかったから、かもしれません。
東北ずん子
なつかしい?きりたん、蛍を見たことあったっけ?∑(・ω・ノ)ノ!
なれーたーずん子
イタコ姉さまとずん子が首を傾げるかたわら、きりたんは質問には答えずに、「――ふふっ」と、口元を緩めました。その目には、再びやる気の炎が灯っています。確かに、彼女は蛍を見たことがありませんが――夕焼けに漂うその光には、鮮烈な記憶があるのです。
東北きりたん
(――そういえば、わたしから分離したたんちゃんはずっと発光していた……。かぐや姫が中に入っている竹が発光するように、たんちゃんという生命が中に入っているきりたんぽも、同じように発光していたのではないでしょうか……)
東北きりたん
(――と、いうことは、わたしの背中に残っている「きりたん砲」は、たんちゃんの抜け殻?……いずれにせよ、発光するきりたんぽなんて、いつまでも人目につかないはずがありませんね。ググればヒットするに違いありません!)
東北きりたん
――ありがとうございます! ずんねえさま、イタコねえさま!
東北イタコ
ちゅっ!?∑(゚д゚;) き、きりたんが満面の笑みを……!?
東北ずん子
きりたんの笑顔、お餅みたい……じゃなくって! どういたしましてだよ、きりたん!ヾ(*'∀`*)ノ
なれーたーずん子
珍しく、きりたんは爽やかな笑顔を浮かべ、自室へと駆け戻っていきました。ぱあっと咲く夏のひまわりのようなその笑顔は年相応で、ぷにぷにした頬はまるでお餅のよう。ずん子の瞳が一瞬だけギラリと輝きましたが、さすがに自重したようです。
東北きりたん
(光るきりたんぽ……光るきりたんぽ……光るきりたんぽです。今日のわたしは昨日までのわたしと違うのです!)
なれーたーずん子
行きとは正反対に、草履をうまく履きこなして山を一気に駆け下ります。ちょっとだけ鼻緒が擦れますが、今のきりたんはそんな些細なことを気にしません。あっという間に、自宅の前まで帰ってきてしまいました。
なれーたーずん子
きりたんは自室のドアを一気に開いて、マウスを素早く振ってPCを立ち上げます。焦りすぎてネットへの接続認証が済む前にブラウザを立ち上げてしまったのはご愛嬌です。
なれーたーずん子
きりたんが検索ワードに「光るきりたんぽ」と打ち込むと、すぐに検索結果が返ってきました。
なれーたーずん子
約 73 件 (0.19 秒)
(最終アクセス: 2012.7.5)
東北きりたん
――…………………………。
東北きりたん
――少なっ!!
東北きりたん
(――え!? こんなに少ないものなんですか!? もしたんちゃんのことが話題になっているとしたら、すぐにニュースになって、それが転載されて、物好きの人たちが調査報告とかあげちゃって……少なくとも、4桁ページは堅いと思っていたのですが……)
東北きりたん
(――で、でも、0でなくてよかったです……。それに、一番上は動画じゃないですか! 何かのニュース映像かもしれませんし、これは見てみるしかないですね)
なれーたーずん子
想像以上に話題になっていないことに愕然としますが、きりたんはそう考えて気を取り直すと、検索結果の先頭にある動画サイトへのリンクをクリックしました。
東北きりたん
(――あ、このリンク先のおすすめ動画面白そう……。いやいやそんな場合じゃ……でも……)
東北きりたん
――ごくり……。
なれーたーずん子
インターネットに飼い慣らされた彼女の視線が、何よりもまずおすすめ動画欄へと向けられます。やらなければならないことがあればあるほど、関係のないリンクをクリックしてしまう――意思の力を強引にねじ曲げる、PCの引力。
なれーたーずん子
(――5時間後、日付変更直後――)
東北きりたん
――……………………。
なれーたーずん子
……もはや、説明の必要はないでしょう。真っ暗な部屋にたたずむきりたんの白い肌を照らすディスプレイには、大量の動画を載せたタブ。
なれーたーずん子
死んだ目をしたきりたんは、自分への怒りでぷるぷると打ち震えながら、悔しそうに奥歯を噛みしめ、呪詛の言葉を吐き出しました。――もちろん、すでに日付が変わってしまっていることを、承知の上で。
東北きりたん
――明日から! 明日から本気出します!
なれーたーずん子
――その後、「やはり夜に探し出すしかない」という結論を得たきりたんは、夜型の自分を正当化して夏休み中その調子で過ごし、ずん子にこっぴどく叱られてしまいますが――それはまた、別のお話。
なれーたーずん子
――おわり――(来週は水着回です! ずん子たちの水着イラストを募集しています! 頂いたイラストは、作中で使わせていただきますよ!)
なれーたーずん子
次回はこちら http://inove.jp/ivsid1399