『アンケート調査の結果、女性にとって、「透けブラ」という現象は大して恥ずかしくない事件だそうです。とはいえ雨に打たれてブラウスぴっちりは永遠の憧れですよね!』
いよいよ本格的に到来した夏! 男性も女性も薄着になる季節ですね。夕立も多くなって、突然の雨に驚いて雨宿りをしようと思ったら軒下にすでに先客がいてよく見たら片思い中のクラスの女子生徒で雨に打たれたせいかブラウスは透けてるわ髪の毛は湿ってるわでいつにもましてお色気アップのドキドキイベント!も全国で多発することでしょう。また、身体のラインが隠しきれなくなってダイエットの必要性を痛感されている方は多いことと思います。そこでこのずんだ餅!
ざあざあ、ごろごろ。外には落雷を伴った大雨が降っています。今は夕方ですが、お昼頃からずっとこんな感じの雨です。繁華街も、いつもと比べて人影がまばら。商売あがったりです。
はあ……。なんでかなー。調子悪いなー(´ω`;)
ふう、と溜息をつくずん子も、まるで外の雨を心の中に取り込んでしまったかのような顔色です。いつもと違って、バイト先のファミレスの制服に身を包んだ彼女の姿は、普段は着物で隠れている見事な身体のラインがあらわになっていますが、表情がそれを台無しにしています。
よおし、もう一度試してみよう!(`・ω・´) とりあえず、目標はあのよもぎ餅で……。
そう言うと、ずん子は厨房の冷蔵庫の間に隠していたずんだアローを取り出し、矢尻にずんだペーストをくっつけて、きりりと構えました。
慣れた手つきで、ばしゅっ、と矢を射ます。「調子悪い」と言うわりには美しい軌跡を描いて飛んでいったずん子の矢は、見事、狙いのよもぎ餅に突き刺さりました。
ですが、ここから先が違いました。普段であれば、ずんだペーストの矢が当たった対象物は「ぺかー」っと、すぐに発光、謎の化学反応を起こし、口では到底説明できないような不思議な原理が働いて「ずんだ餅」へと変化するわけですが――。
……やっぱり変わらないなあ。ずんだペーストがべちゃってくっつくだけだよ……。よもぎずんだ餅も悪くないけど、こしあんとずんだの味が食い合ってそれぞれの良さが失われちゃうんだよね……(´;ω;`)
ファミレスでバイトし、厨房に入って、業務用冷蔵庫の底を二重底に改造してこっそりずんだペーストを保管してきた罰が当たったのでしょうか。
――ずん子の必殺技、「ずんだアロー」が無力化してしまったのです。
あーん、どうしちゃったんだろう私。゚ヽ(゚`Д´゚)ノ゚。 昨日までは普通に使えたんだけどなあ……。
昨晩と言えば、「ミント味のガムもずんだ味にできるよね!」という大胆極まりない着想のもと、各社のミントガムを購入してきて片っ端からずんだガムにし、食べ比べを行ってみたところでした。結果、最も味が長持ちするのは某葉緑素配合のガムであることも分かった……のですが。
撃ちすぎたのかな。昨日は良く眠れなかったし……(´;д;`) なんか、身体の芯から疲れてる感じで、疲れすぎて眠れないなんて久しぶりだったよ……。
……そうだ! こういうときこそずんだを食べればいいじゃない!O(*>▽<*)o 疲労回復、集中力向上、メンタルケア、そしてダイエットにも効果的! つまり、私の不調も回復するってことだよね!
(感想はお客様個人によるものです。全ての方に同様の効果が現れるとは限りません)
もぐもぐと、ずん子は恍惚の表情でずんだを食べます。その表情はまるで、能力の件は言い訳で、ただずんだを食べたかっただけのようです。
うーん(≧▽≦)ゞ やっぱりずんだは生で食べてもおいしいね! (=ず・ω・だ=)ノ(=ず・ω・だ=)ノ!!
すっかり元気になったずん子は、改めて気を取り直すと、再び弓矢を構えました。そして、さっきのよもぎ餅へ向かってばしゅっと。
……あ、あれ? またダメだ……。
しかし、よもぎ餅は発光せず、ただ単純に、矢尻についたペーストがべちゃっと飛び散っただけでした。今回も失敗です。
はー、なんでだろ(´;ω;`) まあ、自分でもずんだアローの仕組みが分かってないんだよね……。いい機会だし、自分の能力について真面目に考えないとなあ。
ずん子は肩を落として、弓矢を元の場所へ、ずんだペーストを二重底に改造した厨房の冷蔵庫の中へと戻します。ぱたん、と業務用の重たい冷蔵庫の扉を閉じると、ほとんど同時に、来客を告げるベルが鳴りました。
……あ、お客さんだ。いらっしゃいませー!
淀んだ空気に包まれている一軒のファミレスに入ってきたのは、二人の少女。この猛烈な雨の中、まさか来客があるとは考えていなかったので、店員さんはほとんど休憩中でした。なので、厨房のずん子が代わりに接客をします。
ひー! すっごい雨でしたわ!ヽ(`Д´)ノ ……あ、二名ですわ。
――これだから外界はクソなんですよ……。まったく。
それぞれに不満そうなお姉さまと幼女ですが、特に幼女の方は本気でキレているようです。もちろん表情には表れませんが、彼女の背中のきりたんぽが\プシュープシュー/と、香ばしい味噌の香りを吐き出しているので、すぐに分かります。
レストランに味噌の香りを振りまかれてはたまりません。二人を席に案内したウェイトレスさん=ずん子がおずおずと「あのー、お客様……。店内での『きりたん砲』のご利用は控えていただけると……」と言ってきますが、今の幼女はそれどころではないようでした。
(クソクレーマーですわ……( ;∀;) 逆上してさらに味噌の香りが濃くなってるし……)
――神さまは申告制ですー。わたしは今し方神さまになったんでs……………………って、あれ? ずんねえさま?
いらっしゃいませ、イタコ姉さま(*'ω'*) 私ここでバイトしてるんですよー。そういえば、言ってなかったですね。
――ね、ねえさま……。今のはその……。
あー、ごめんなさい(´・_・`) 当店にはタバコをたしなむ方用の喫煙席とー、お味噌をたしなむ方用の喫味噌席はないんですよー……。
――……ぽ!?
びきり、ときりたんの表情が硬直します。
――ね、ねえさまごめんなさい!ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい見捨てないで!
ずん子に縋り付くように這いつくばるきりたんの背中からは、パシュ、ブシュ、と哀しみの味噌スメルが漏れ出しています。態度は演技かもしれませんが、言葉は本心のようです。分かりやすいですね。
……もう。次は他人に当たっちゃダメだよ、きりたん(;´Д`) まだまだお子さまなんだから……。でも、ちゃんとお昼に起きてるのは偉いね!
ああ、そうそう。ずん子ちゃんの能力がなくなっちゃったから、その原因を一緒に調査してるんですわ(*'ω'*) ……あまりにもすごい雷だったので、いったん避難してきましたけれど。
へー! そうだったんだ!ヽ(〃∀〃)ノ ありがt……って……。
……あああああああああああああっ!? な、なるほど!?Ε=ε=ε= ┌(;´゚ェ゚)┘
∑(゚ω゚ノ)ノビクゥ ど、どうしたんですの?
――ね、ねえさまどうしたんです……!?
まだ怒ってます……?
まだ怒ってます……?
怪訝そうな表情のイタコ姉さまときりたんに向かって、突然叫びだしたずん子は「我が意を得たり」と、満面の笑顔で語りかけます。
雷ですよ! 雷! ほらほら!(≧▽≦) 私がこの能力を手に入れたときのこと、思い出してみてくださいよ!
(――回想:1年前、三陸海岸――)
(=ず・ω・だ=)ノ(=ず・ω・だ=)ノ(=ず・ω・だ=)ノ(=ず・ω・だ=)ノ(=ず・ω・だ=)ノ
今日もたくさんお豆を買ってきたし、ずんだをたくさん作るぞー! きゃっ!?∑(゚ω゚ノ)ノ
ガラガラぴしゃーん! ずん子に雷が!
ぎゃあ!(*`ロ´*ノ)ノ(バターン
搬送されるずん子!
……はっ!? ここは……病院!? あっ!? こんなところに矢が! ちょっと射てみよう! ついでだしなぜか懐に置いてあったずんだをつけてみよう!
餅に向かって射るずん子! ばしゅーん。べちゃっ。
わーお! ただのお餅がずんだ餅に! すごい! 私にもついに能力が!
(――回想おわり――)
――……ずいぶん大雑把な回想ですね……。
それで、これが何かのヒントなんですの?(。・´_`・。)
つまりそういうことですよ! 雷にはすごいエネルギーがあって、すごいエネルギーのおかげでずんだパワーが手に入ったんですよ!(`・ω・´) ってことは、もう一度雷を浴びればいいはずです!!!
わーい!!!!(o'∀'o)ノ 雷さーん!!!!!
ずん子は勤務をほっぽり出して店の外に飛び出すと、持ってきた自分の弓を高く掲げて、「雷さーん! おいでおいでーヽ(≧▽≦)ノ」と叫びました。数少ない通行人が気まずそうな顔をして、そんな彼女をそうっと避けていきますが、本人は気にしていないようです。
あーあー……制服がびちゃびちゃですわ……(´;ω;`)
ぷしゅーっ、ぷしゅーっと味噌の香りがしますが、イタコ姉さまはそれに触れてはいけない気がして、無視することにしました。
ずんだをー! 私の夢をかなえたまえー! 世界のZUNDAのため、我が弓に力をー(o´∀`o)ノ
はたから見ると完全に怪しい宗教の信者ですが、こうなってしまったずん子が止まらないのは、バーサーカーモードの彼女を見れば分かることです。イタコ姉さまときりたんは濡れるのもイヤなので、店の中から、他人の振りをしてずん子を見つめていました。遠巻きに。
――確かに、ずんねえさまがあの弓を手に入れたのも、落雷がきっかけでしたが……。
アンパ○マンじゃないんですから……( ゚ω゚;)、そう都合良く、雷が落ちてくるわけが……あら?
ずん子が外に出てしまったので、誰も注文を取りに来てくれません。イタコ姉さまはぼーっと空を眺めていると、真っ黒な雨雲が一瞬だけずんだ色に染まり、まるでずんだペーストのような黄緑色の輝きを発したかと思うと――。
――え。まさか。
がらがら、ぴしゃーん! と、まるで吸い寄せられたかのように、弓のてっぺんに落雷が直撃しました。
ばたーん。と、糸の切れた操り人形のような動きで、ずん子が地面に突っ伏します。傍らに投げ出された弓が光り輝いていますが、とてもそれどころではありません。
――ちょ……!? 直撃した!?
ずんちゃん!? 大丈夫ですの!?(´゚Д゚`)
イタコ姉さまときりたんが慌てて店外へ飛び出すと、激しい落雷によってエネルギーを発散し尽くした雨雲が、大人しくなってどこかへと飛び去っていくところでした。落雷が直撃したずん子は妙に気持ちよさそうな表情を浮かべて、息も絶え絶えに道路に横たわっています。
いいから! 喋るんじゃありませんわ! いま救急車を……。
そう言って携帯電話を取り出しかけたイタコ姉さまの手を、ずん子がぎゅっと握って抑えます。落雷を浴びたというのに、彼女の瞳はどこか恍惚としており、お肌もつやつやなのです。ダメージは受けているようですが。
――ずんねえさま? なにが分かったのですか?
今のずん子には、ダメージを顧みることよりも大事なことがある。それをいち早く察したきりたんが、彼女のもう一つの手を握ります。そして、息も絶え絶えのずん子の顔に自分の耳を近づけて、彼女の声を聞きやすい位置にポジショニングしました。
……私の……私の能力って、これ……。
――はい。ずんねえさまの能力ですね。
…………これ…………。
……(ゴクリ
……………………残弾制です……(ガクゥ
ずんちゃあああああぁぁぁ( ´Д` )ぁぁぁあああああん!!??
(――ど、どうでもいい情報すぎる……)
どこかすっきりとした、すごくいい表情で気絶しているずん子。そんな彼女の囲んで、大慌てしている姉妹。そんなシュールな光景が5分ほど続いた後、道路の向こうから、バイトの同僚さんが呼んでくれた救急車のサイレン音が聞こえてきたのでした。
(――後日――)
あ、いらっしゃーいヽ(´∀`)ノ 二名様ですね?
はーい、ですわ。
――無事に職場復帰できて良かったですね、ずんねえさま。勤務時間中に業務放棄して制服をびしょびしょにした挙句、落雷が直撃して病院送り――だなんて、普通クビですよ……。
……お客様、喫味噌席にご案内しましょうか?(ニッコリ
――なんでもないです! 注文は抹茶アイスで! あとお水ください!
イタコ姉さまが「私も同じのですわ!」と告げると、ずん子は元気よく、綺麗な脚をぱたぱた、お尻をふりふりと動かして、厨房の方へと引っ込んでいきました。どうも、このファミレスは常に人手不足のようです。
でも、無事で良かったですわ。ずん子ちゃんの弓って、エネルギーを充填して使う仕組みだったのですわね(っ´∀`c)
――まだまだ、謎は多いですけどね……。あの弓、ずんねえさまでないと使えないみたいですし。
選ばれたんでしょうか? なんか伝説の勇者の剣みたいですわねヾ(*'∀`*)ノ
――それにしては能力がピーキーですけどね……。毎回落雷を浴びるわけにもいかないでしょう……。
長女と三女がお冷やを片手にだべっていると、しばらくして、厨房からアイスを二皿積んだずん子がやって来ました。その表情は晴れ晴れとしていて、まるでずんだを布教している最中の彼女のよう。働くことを心から楽しんでいるような、そんな感じです。
お待たせしましたー! 抹茶アイス二人ぶんです~(* '∀'人) じゃ、ちょっとあっちのお客さんのところに行ってきますね。
かたりとお皿を置くと、ずん子はすぐに奥のテーブルの方へ早足で向かっていきました。今日は晴れているので、お客さんもそこそこ入っているのです。
――じゃ、いただきましょう。抹茶アイスっておいしいですよね。
奇跡のフレーバーですわね!O(*>▽<*)o この間は食事どころではなかったですし。どれどれ……。
ぱっくんちょ。はしたなく大口を開けて、イタコ姉さまが嬉しそうにアイスをほおばります。おいしそうにご飯を食べる女の子の姿は、それはそれでいいものです。
――……………………。
……………………(´・ω・`)
――ずんだ味ですね。
…………ずんだ味ですわね(´・ω・`)ショボーン
――おいしいですね。
………………おいしいですわね(´;ω;`)
奥の方のテーブルから、「はい! よもぎ餅三丁ですね!」というすごく嬉しそうな声が聞こえてきます。注文を取ったずん子が厨房へ引っ込むと、調理の音が聞こえたあと、「きりきり」「ばしゅっ」「ぺかー」という音が聞こえてきて、厨房がまばゆい光に包まれました。
――厨房から出てきたずん子の手に握られているのは、明らかにずんだ餅。
なぜバイト中に能力が使えなくなったことを気にしていたのか。なぜバイト先にずんだアローがあったのか。全てを察したイタコ姉さまときりたんは――楽しみにしていた抹茶アイスをずんだ味に改造した「犯人」に対して、憤怒の表情を差し向けました。
貴様アアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!(#゚皿゚)
――その後、さすがによもぎ餅をずんだ餅に変えたのは露骨だったのか、お客さんからクレームがやってきて、いよいよずん子もクビの危機に瀕してしまいますが――それはまた、別のお話。
――おわり――
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