ラッキースケベは起こりえない。そう考えていた時代が自分にはありました。
【まとめ用説明文】ハーレムマンガやアニメで、草食系の主人公が足を滑らせ、ヒロインたちのあんなところへこんなところに突っ込んでしまう展開のことを「ラッキースケベ」と言うようです。このラッキースケベ、読者の皆さんは「こんなの現実でありえねえよ!」と突っ込みながらご覧になっているかもしれませんが、なんと! 我々はラッキースケベを意図的に発生させる方法を発見したのです!
『――「ラッキースケベ」ってぇ、どういうものなんですか~?』
ふるさと女学院、昼休み。めたん、そしてそらさんと昼食をとっていたずん子は、「赤ちゃんはね、コウノトリさんが運んできてくれるんだよ」が通じなくなった思春期一歩手前の子どもを持った親のような困難に直面していました。
太陽光で動くそらさんは、摂食は可能ですがエネルギーとして食べ物を食べる必要はありません。
その代わり、お昼休みはずん子たちの側でぽけーっと太陽のほうを見ているのが通例になっていますが、その状態からの爆弾発言でした。
その代わり、お昼休みはずん子たちの側でぽけーっと太陽のほうを見ているのが通例になっていますが、その状態からの爆弾発言でした。
……え、えーっと。そらさんってウェブ検索機能ついてるよね?( ゚ω゚;) 私の口からは答えにくいから、検索してくれるとたいへんありがたいのですが……。
『あ~、そうじゃないんです~。もう言葉の意味は検索済なのでぇ、「実際に体験する」と、どういうものなのかな~って、思ったわけです♪ まーくつーを使っていいので、ちょっとやってみてくれませんか~?』
故意に実行したら、それは「ラッキー」スケベじゃなくなるんじゃないかしら……。
『うふふ♪ その点についてはぁ、大丈夫ですよ~♪ それっ!』
と、そらさんが一声かけると、ずん子の身体が一瞬だけふわりと浮き、謎の力で、そらさんの方へと突っ込みます。完全に不意打ちを食らったずん子は、なすすべがありません。
『ラッキーぃ、です~♪』
――ぽよん。
(あ、柔らかい……ってそうじゃなくて!ヽ(`Д´)ノ すぐ離れないと!)(バッ
絶妙に調整された力加減によってそらさんの胸部へと引き寄せられたずん子は、ラッキースケベのお手本のような反応を見せて、彼女から飛び退きます。突然のハプニングに顔を真っ赤にしているずん子とは対照的に、そらさんはいつもの微笑でニコニコとホバリングを続けているのでした。
『ほうほう♪ ネットで見た画像の通りですね~。ご主ずんさま(76)の反応、記録しておきますね~♪』
まあ、ずん子は満点よね。でも、ラッキースケベって、どちらかというと受け手のほうの『反応――イグニッション――』が大事なんじゃないかしら?
『受け手のリアクションはですね~、先週秋保温泉に行ったときにぃ、きりたんさま(5)の反応を記録してありますよ♪ 鼻血を吹いて卒倒すればいいんですよね~♪』
前回( http://togetter.com/li/375904 )に起こったことを、そらさんは漏れなく記録しているようです。前回は彼女もひどい目に遭いましたが、それでも記録は手放さなかったということでしょう。
わ、私たちが記録のサンプルだとたぶんすっごい偏るんじゃないかな……(´;ω;`) あとほら、撮影される側の権利とかそういうので、ね? 温泉のデータは、ね?
『うふふっ、いやですね~ご主ずんさま(76)♪ まーくつーにとっての「記録」は、ご主ずんさまたちにとっての「思い出」とか「記憶」と同じ意味ですよぅ♪ ネットに放流なんかしませんって~♪』
(前にずん子の弓道姿を勝手に配信してたような……)
ツッコミを入れたいめたんでしたが、そらさんが「記録」についてあんまり楽しそうに語るので、心の中で考えるだけに留めておくことにしました。なんとなく、今の彼女は普段の「微笑」とは、少し異なった表情をしているように見えたのです。
『何かの拍子に過去のお宝映像が欲しくなったら言ってくださいね~♪ 女子力の変遷から入浴シーンまでぇ、ご主ずんさま(76)のすべて、漏れなく記録しておきます~♪』
『あ、でもあくまで「女子力」ですからぁ、胸囲とか体重とかぁ、そのあたりは計測できないんですよ~♪ 赤ちゃん手帳みたいなこともしたかったのに、残念です~』
ゥワァ───ヽ(゚`Д´゚)ノ───ァァン!! めたんちゃんこそ、そんな食事でなぜ私より大きいの!?
今まで明かされてきませんでしたが、恐らく誰もが予想していたとおり、めたんの弁当箱にはクルミやらヤマブドウやら、山で手に入る天然の食材がふんだんに詰め込まれています。くしくも、秋の到来を感じさせるメニューなのです。
あ、うん……ごめん……( ゚∀゚;)タラー
うふふふふふふふふ……なにを言っているのかしら? このお弁当とてもおいしいわよ? ええおいしいですとも。これよりおいしいお弁当作れたら大したものよ?
ポリポリとクルミをかじりながら、めたんはなにか清浄なるものに浄化されたかのような笑顔で笑いました。彼女には「お家復興」を言う夢があるのです。そのおかげで、強くいられるのでしょう、たぶん。
『ごちそうですか~♪ じゃあ、遠慮なくお邪魔します~♪』
……べ、別にカロリーがとりたくて遊びに行くんじゃないんだからねっ! そりゃ、「あの日」なら仕方ないわよね!? ……あの日?
おっ!(≧▽≦)ゞ よくぞ聞いてくれました!!
素直に喜ぶそらさんに対して、めたんはテンプレのような反応を返します。全くタイプの違う二人ですが、来てくれるのは間違いないようで――ずん子は、嬉しそうに顔を綻ばせました。
(――夜九時、東北家庭先――)
――ずん子が息を呑みます。言われたとおりに遊びに来ためたんから「なんか変な音がしない?」と指摘されて飛び出した庭先で、彼女は、幻想的な光景に出くわしていました。
中秋の名月――満月を背負って、一体のアンドロイドが空中で静止しているのです。反重力装置の薄ぼんやりとした光に全身を包み、切れ長の眼を閉じて、背中の太陽光パネルを翼のように広げるそらさんの姿は、まるで、地上に現れた天使のようでした。
よく見ると、彼女の耳につけられたインカムのアンテナが点滅しています。どうやら彼女は、誰かと交信をしているようでした。
あ、終わったみたいですわね(o'∀'人) ちょっともったいないというか……秋の満月を背景に宙に佇むそらさん、写真に収めたいくらい美しかったですわ。
『交信相手――トランスミッター』は誰だったのかしら?
大量の月見団子を抱えたまま、イタコ姉さまとめたんが感想を漏らします。その間に、通信を終えたであろうそらさんはゆるゆると降下してきて、ガシャコン! と、背中のパネルを身体の中に収納しました。
『全世界にいる、まーくつー以外の全ての「九州そら」とぉ、本日手に入れた「記録」を同期してたんですよ~♪ もちろん、この間宇宙に打ち上げられた「まーく・ぜろ」ともですよ♪』
ああ、なるほど。記憶を集積管理してるのかしら。そういえばアンタ、たくさんいるんだったわね。だからさっきも「ラッキースケベ」なんていう単語をどこからともなく手に入れられた、と。
――そらさんは各地にいて、手に入れた「記録」を全部まとめて管理してるってことですよ。
『はい~♪ 昼間にやると目立つのでぇ、夜間に情報を交換してるんです~。ちなみにぃ、さっき他の個体から入ってきた情報の中でぇ、まーくつーが今夜「体験」してみたいと思ったのはぁ……「月見団子」です~♪』
あ、これですわねヾ(´・∀・)ノ 食べてみます?ヾ(´・∀・)つ○
イタコ姉さまが手元の月見団子を差し出すと、そらさんは嬉しそうにホバリングしていきます。彼女はイタコ姉さまから受け取った団子を大事そうに胸元に抱え、興味深そうに口を開きますが――。
――それを遮ったのは、ずん子でした。
いまいちよく分からないけど、そらさんに「記録」された情報は、他のそらさんたちを通じて、全国各地を駆け巡るってことでいいんでよね!?ヾ(o゚Д゚o)ノ゙ ならばその月見団子、そのまま食べさせるわけにはいきません! とうっ!!(`ェ´) ピャー
――なっ……ずんねえさま、いつの間に「ずんだアロー」を!?
ぱしゅ。ぱしゅ。ぱしゅ。一寸の狂いもなく、ずん子はずんだペーストを矢尻につけた矢で、月見団子を射ぬいていきます。すると、たちまちのうちに――月見団子のうえに、おいしそうなずんだが乗せられていくのです。そう、これはもはや月見団子ではありません。これは――。
――月見(=ず・ω・だ=)ノ団子!(`・ω・´) 全国各地のそらさんたちに、ぜひとも月見(=ず・ω・だ=)ノ団子のおいしさをご賞味ください!!
『あ~……………………』
もちろん、そらさんの手の中にある月見団子も例外ではありません。彼女は一瞬で変化した月見団子のことを、じっと見つめています。
『……………………(´;ω;`)ブワッ』
!?∑(゚ω゚ノ)ノ も……もしかしてショックだった!? ご……ごめんなさい(´;д;`)……まだたくさん作り置きがあるから、月見団子そのものが食べたいならすぐに……。
『な~んてぇ、嘘です~♪ ん~、月見(=ず・ω・だ=)ノ団子、おいしいですよ~(モグモグ』
けろり。一言で表現するならそういうのが適切でしょうか。「やってしまった」と思い込んだずん子が慌てて頭を下げるさまを楽しむかのように、泣き顔だったそらさんは一瞬で涙を引っ込めました。まるで、小悪魔のような表情で。
『うふふ~♪ 昼間に「記録」したご主ずんさま(82)のパニックシーンが他の個体にも好評だったのでぇ、ちょっと不意打ちをしてみましたぁ♪ こちらこそ、ごめんなさい♪』
――昼間!? ずんねえさまのパニックシーン!? い……一体何が!?
そこは食いつくところと違いますわよ!?(`ε´*) ……はい、そらさん。こっちが通常の月見団子ですわ(o'∀'人) もっとも、各地域で作り方が違うみたいですけど。
『あらあら、ありがとうございます~♪ ……ん~♪ こっちもおいしいです~♪』
食費を浮かすために、めたんは必死です。花より……というか月より団子の彼女は、東北家の縁側に月見団子と月見(=ず・ω・だ=)ノ団子を並べ、交互に食べ始めました。彼女をからかおうという野心たっぷりのイタコ姉さまがそれに続き、きりたんはお茶を淹れに、家の中に戻ります。
『ご主ずんさま(82)、おいしいずんだをありがとうございます~♪ このずんだなら、間違いなく全国に普及すると思いますよぉ♪ ずんだカフェも夢じゃないです~!』
あ……う、うん(〃ω〃) そうかな? ありがとう!
取り残されたずん子の側に、そらさんがゆっくりとホバリングしてきます。相変わらず、口元には微笑を浮かべたままですが――彼女の瞳は、どこかキラキラと輝いているように見えました。
『――まーくつーたちにもぉ、夢があるんですよ~♪』
そう言って、紫の髪をしたアンドロイドはずん子の瞳を見つめます。
『――この世の中のすべてをぉ、「記録」して……それだけじゃなく「体験」してみたいんです~♪ すべての食べ物を食べてぇ、すべての言葉の意味を知ってぇ……まだ、人間が知らない世界のこともぉ、見てきて、触れてきたいんです~♪』
『だから、まーくつーにとっては「ずんだ」も「宇宙」も同じ価値があるんですよ♪』
『他人に話すのは初めてです~』と「はにかみながら」、アンドロイドの少女は秋の夜空を照らす真ん丸な月を――いや、その向こうにある広大な宇宙を見上げました。大人っぽく造形された彼女の表情が、その一瞬だけ、少女のように幼く見えます。
そこまで話してもらえれば、余計な言葉はいりません。ずん子はただ首肯すると、隣に立つそらさんの手を握って、みんなの待つ縁側へと引っ張っていきました。
(なんという花より団子状態……月の精でも呼んで、みましょうかしら、ですわ(;´・ω・)……)
はいはーい!(´ω`)ノシ 私たちも月見(=ず・ω・だ=)ノ団子食べまーす!! そらさ……そらちゃんにお茶を! 月見(=ず・ω・だ=)ノ団子の味を一層引き立てる暖かい緑茶を!! そして世界へ羽ばたく月見(=ず・ω・だ=)ノ団子!
縁側に並んで腰掛けたずん子とそらさんも加勢し、月見と称した月見団子争奪戦はより一層激しくなります。夜中に大量に炭水化物を摂取したら翌日に泣くことは分かっているのですが、理由がある女の子は強いのです。――ただ一人、イタコ姉さまを除いて。
はしゃぎながら団子を貪る女の子たちを、イタコ姉さまが哀愁の目で見つめます。銀色の髪の毛も手伝って、なんというか、非常に申し上げにくいのですが、背中を丸めて月を見上げている姿が妙にしっくりきます。彼女、まだ19歳なのですが。
なんといっても高校生と小学生です。イタコ姉さまはともかく、他の四人は夜も更けようかという時間に、とても楽しそうにはしゃいでいました。が――。
『……あ~~~~』
あたしはもう、もう……(´;д;`)ウッ・・って!?∑(゚ω゚ノ)ノ そらさん、突然声が遅回しのビデオみたいな低さになりましたわよ!?( ゚ω゚;)
『ご~め~ん~な~さ~い~~~。すこし~はしゃぎすぎ~~て~~でんち~が~きれ~~そうで~~あ~~~きれます~~きれますよ~~~きれちゃいます~~~~』
――ブツンという音とともに、その時間は終わりを迎えます。
記憶の同期のためにたくさんのエネルギーを消費したのでしょう。エネルギーの補給ができない夜間にそのままはしゃいだこともあって、そらさんは突然、スイッチが切れたかのように倒れ込みました。いつもの笑顔のまま倒れ込んだのは、なんと――ずん子の膝のうえ。
おうふ!(;゚∀゚) そらちゃん、意外と重量があるんだね……。
(――隣同士に座っていたそらさんがずんねえさまの方へ倒れ込んで……これは……ひざまくら!? わたしでもほとんどしてもらったことないのに!? ずんねえさまの魅惑のふとももに!? ひざまくら!? うらやまし……いや、けしからん!!)
きりちゃん、考えていることが筒抜けですわ……(;-ω-)ゞ ま、それはいつものことだし放っておいて――めたちゃん、あなたの力でそらさんにエネルギー補給できませんの?
え!? え……ええ。もちろんできるはずよ。ただ、よっぽどの緊急時でもないかぎり、寝ている女の子の頬にベーゼをするのはちょっと……。
ふふっ(*´∀`*) そうだね。頭の輪っかをつつけば起きるってことは分かってるんだし、夜くらいは寝かせてあげてもいいんじゃないかな(ナデナデ
そらさんを撫でるずん子の手つきは優しいものでした。そらさんに対して嫉妬しているきりたんも、彼女のことを「アンドロイド」ではなくて「女の子」と呼んだめたんも、そしてもちろんずん子も、そらさんを「人間」と見なして接しているようです。彼女たち自身は全く自覚していませんけれど。
…………ええ。そうですわね(*'ω'*)
唯一、イタコ姉さまだけが彼女たちの思い、それがどれだけ素敵なことか、気付いたようです。彼女はキツネの耳をぴょこぴょこと跳ねさせて微笑むと、「じゃあ、毛布を持ってきますわね(o'∀'人)」と言って、立ち上がります。
……あ(ノ∀`;) ね、姉さま……毛布よりも、布団を敷いてくれないでしょうか……。まだひざまくらを開始して5分も経ってないのに、もうふとももが痺れて……( ;∀;) なんか超合金っぽいのでできてるみたいで、反重力装置が起動してないと……重っ……。
(――翌朝――)
ばきゃ、めきめきめきめき、がっしょんがっしょんがっしょん、ばばばばば。前から背中のハッチが開いた音、背中からアームが4本伸びてくる音、アームが太陽の位置を探してさまよう音、太陽光パネルが展開する音です。
『おはようございます~♪ ……って、ご主ずんさま(12)にみなさま~? どうしたんですかぁ~? 目の下にものすごいクマができてるんですけどぉ……』
……あはは。そらちゃん、私たち4人で運んでも全然持ち上がらないんだね……(´;ω;`) 布団まで運ぼうと頑張ってたら、いつの間にか朝日が……。
『お、重いですかぁ~? そ、そんなことを言われるとぉ、まーくつー自身の女子力が下がってしまいます~/// どうしましょう~?』
いや……「どうしましょう」って言われても、ちょっとその問いは……『ターンオーバー――徹夜明け――』の頭にはキツイわね……。
『あ~! そうです~♪ せっかくだからぁ、みなさまの体重も計測してぇ、「記録」すればいいんですよぉ~♪』
え……………………。
徹夜明けの思考速度で、ずん子たちがそらさんの言葉の意味するところを飲み込みます。そらさんに「記録」されるということ――それは、入浴シーン・ラッキースケベに続いて、彼女らの「体重」までもが、後世に伝わるということです。
ちょ……ストップストップ! そこは女の子として譲れません。゚ヽ(゚`Д´゚)ノ゚。 ただでさえ昨日月見(=ず・ω・だ=)ノ団子食べたばかりなんだから!!///
『よいではないか~よいではないか~♪』
――その後、徹夜明けの身体でそらさんから逃げ回ったずん子たちは、月見(=ず・ω・だ=)ノ団子どころじゃない量のカロリーを消費し、体重計のうえで快哉を叫びますが、それはまた、別のお話。
――おわり――
※今回のコメント募集は「大喜利」です!
お題は『ずん子が勇者役のRPGが大ヒット!
「魔王を倒してこい」と言った王様に彼女が返した一言とは!?』
「お題への答え」をコメント・あるいはボイスロイドを使った音声でご応募ください! 人気の方には……な、なんと!
※今回のコメント募集は「大喜利」です!
お題は『ずん子が勇者役のRPGが大ヒット!
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