【むちむち】じゃありません!【もちもち】です!
「むちむち」も「もちもち」も、基本的には女性に対する「褒め(?)」言葉ですが、「むちむち」が視覚的な魅力を言い表す言葉なのに対して、「もちもち」は触感的な魅力を表す言葉です。――つまり、「あの子、もちもちだね!」と言える人間はリア充なのではないでしょうか!?
秋の夜長の東北家から、ずん子の悲鳴が響きます。今日は10月27日。ずん子の誕生日です。
誕生パーティーの会場であるリビングでは、きりたんが尻餅をついていました。彼女は、いつも背負っている二本の「きりたんぽ」に加えて、卵をそのまま巨大にしたような形の、白い塊を背負っています。
そら、「一升」って何の単位なの?
『検索したところぉ、容積を表す単位みたいですね~♪ 「一生」と同じ発音ですから、縁起のいい日によく使われる単位だとか~♪』
――うう……、本当にごめんなさい……。しかも、せっかく書いてもらったねえさまのお名前まで……。
きりたんの背中を見ると、彼女が背負っている卵形の「一升餅」が、尻餅をついた衝撃で真っ二つに割れています。さらに、そのお餅に近寄ってみると――その表面に書かれている、「ずん子」という名前が、豪快に真っ二つになっているではありませんか。
だ、大丈夫だよきりたん!(;゚∀゚) 一升餅って本当は一歳の誕生日のときに背負ってみるものだし、今回はそんなに大事じゃないって!
――し、しかし……。わたしたちが一升餅をプレゼントしたら、「今年は私が『ずんだアロー』に目覚めて約一年! ばっちりな誕生日プレゼントだよ、やったー!!」って大はしゃぎだったじゃないですか……。
まーまー。お餅がきりたんを守って代わりに割れてくれた、って考えればいいんだよ!ヽ(´∀`)ノ
「一生の長さ、重さを赤ん坊に実感させるため、一歳の誕生日のときに「一升」分のお餅を背負わせて祝う文化は、日本中のどこにも見られるようです。特に東北地方は、誕生日にお餅を食べる風習が根強く残っていて、一升餅を専門的に扱うお店なども存在しているのです。
だからこそ、でしょう。縁起物である一升餅を割ってしまったきりたんの罪悪感は、ずん子が何を言って励まそうと拭えるものではないようでした。
――わたし、くっつけます!
ちゅっ!?∑(゚ω゚ノ)ノ くっつけるって……お餅をですの!?
――そうです! 幸い、ここには変な……じゃなくって、すばらしい能力を持った皆さんがいてくれるんですし……協力してください! わたし、くっつけたいんです!
きりたんは、珍しくも決意にあふれた眼差しで、誕生会に集まった面々を見渡すのでした。
……分かりましたわ(`・ω・´) きりちゃんが本気を出すのは珍しいですし、やりましょう! 皆さんもいいですわよね?
いいわよ。面白そうだし。
『はぁい~♪』
こうして、ずん子の誕生会はお餅をくっつけるミッションとなったのでした。
(――発案①:イタコ姉さまの場合――)
……セオリー的には、断面にお餅を挟み込んでくっつけるのが一番ですわ(o'∀'人) 幸い我が家にはお餅ならたくさんありますし、それをまず茹でて、間に差し込んでみましょう。
――とはいえ、ちょうど縦書きの「ずん子」の文字を縦方向に真っ二つにしてますから、挟んだお餅をうまく塗らないと、文字が潰れて読めなくなっちゃうかもしれないですね……。
あ、名前?(;´・ω・) 名前のことなんだけど……。
ふふっ。そこでこのイタコの出番ですわ!∑d(゚∀゚d) あたしの妖力で、挟んだお餅に暗示をかけるのですわ!(エンヤコーラエンヤコーラ
ずん子の言葉を遮り、イタコ姉さまはドヤ顔でそう言います。そして目を閉じると、集中力を高め、全身に紫色のオーラをまとい始めました。
きえーっ!ヽ(*`Д´*)ノゴルァァア!!
『お……おおっ~♪ 不思議な力がお餅の周りを包み込んで、挟んだお餅がはみ出さないようにコントロールしてますぅ~♪ (89)→(102)→(165)…………どんどん女子力が上がっていきます~♪ なんか妖艶ですねえ~♪ ……きゃっ!?』
――そ……そらさんのスカウターが爆発した!? ……いや、まあスカウターは爆発してなんぼですね! その調子で頑張ってください。イタコ姉さま!
ぐぬぬぬぬぬぬぬ……はぁっ!!ヽ(`Д´)ノ
く、くっついた!? あっけないわね!?
茹でたお餅を糊代わりに、イタコ姉さまの念の力でそれをアシストした作戦は見事成功したようです。表面に書いてある「ずん子」の字も、まだひび割れこそ目立ちますが潰れずに残っていて一件落着――かと、思ったのですが。
ころん。
着衣を乱して息を荒げるイタコ姉さまの力が抜けると、一升餅を包んでいた紫色のオーラも消えます。すると、どうしたことか――くっついていたはずの二つのお餅が、再び真っ二つに分かれてしまったのです。
『合体状態の維持時間、約30秒です~♪ お餅の天敵は乾燥ですから、くっつけたあとの維持まで考えないといけないみたいですね~♪』
――蒸気だけなら、わたしの「きりたん砲」で出せるんですが……(プシュープシュー
イタコさんときりたんさん、二人が常にお餅に構っているわけにもいかないものね……。「作戦失敗――ミッション・インポッシブル――」かしら……。
(――発案②:そらさんの場合――)
『あ♪ そういえばぁ、まーくつー、真空パック使えますよ~♪』
――それです! 妖力で合体させたお餅に蒸気を注ぎ込んで、その間に真空パックに詰めればなんとかなるんじゃないですか!?
『でもぉ、超科学で作られた、とっても頑丈なパックですから~、ぴっちり閉じるには専門の溶接道具が必要なんですよ~……』
四人が協力する大作戦ですわね!(。・ω・。)ノ なんというか、本当になんとかなりそうですわね……。
どうやら、くっつけるだけならなんとかなりそうです。肝心のずん子はずっと黙っていますが。
まあまあ、ずん子はちょっと黙ってなさい。縁起物のお餅に書いてある名前が真っ二つってのは心苦しいんだから。
『成分を分析したところぉ、食紅で名前が書いてあるみたいですよ~♪ プラモデルをパテで継ぎ足す要領でヒビを埋めてぇ、うえからもう一度なぞり直すしか……。う~ん……』
くっつくにはくっつくとしても、事態はそんな簡単に解決するものではなかったようです。一升餅には、その「一升=一生」を背負う人間の名前が書いてあるのが通例で、ずん子の場合も、それは例外ではありません。それにヒビが入ったままでは、意味がないのです。
――ど……ドラ○も~ん!!!!(チャララチャララチャララチャララチャララチャララチャララララ チャララチャララチャララチャララチャララチャララチャララララ
(――発案③:ずん子の場合――)
……あの~……(;-ω-)ゞ
今まで黙っていたずん子が、おずおずと口を挟みます。ちょこんと片手をあげて肩を丸める彼女の表情は、とても申し訳なさそうでした。
――ずんねえさま、どうぞ。
割れたお餅をそれぞれゆでて、柔らかくしてからこねて一つに戻す、っていうのが一番の近道だと思うんだけど……(;´・ω・)
バカね。さっきから言ってるけど、それじゃあせっかく専業の会社で書いてもらった「ずん子」の文字が消えちゃうじゃない。縁起物なんだから、そういうのは大切にしないといけないんじゃないかしら?
あー……それなんだけどね……(;´Д`)
あ、いや……別にいいんだけど、全然気にしてないんだけど、この一升餅、私のために予約してくれたのって誰なのかなーって思って( ゚ω゚;)
『まーくつーたち四人からのプレゼントですよ~♪ まーくつーとめたんさまは、東北にこういう風習があることを知らなかったんですけど、イタコさまが教えてくださったんですね~♪』
ええ。そうですわ。それでみんなからお金を集めて、あたしが注文したんですわよヽ(*^ω^*)ノ
イタコ姉さまが注文したんですか!?∑(゚◇゚ノ)ノ あ、いや、別にいいんですけど……。
未だに煮え切らない(お餅だけに)ずん子は、こめかみを押さえながら、何かを言おうか否か迷っているようです。彼女は眉間に皺を寄せて、「うーん……」と悩んでいましたが、やがて決心したのか、きりっとした表情で顔を上げます。
――……はい。
「ずん子」っていう名前、実はあだ名でですね……( ;∀;) 私の本名、「じゅん子」って言うんですけど……。
!?
『!?』(ショックを受けたBGM)
『ほ……本当です~(汗) 今、戸籍を調べてみましたけどぉ、「東北じゅん子」で登録されてます~(汗)』
――マジで!?
ろ……六歳差ですし……。きりちゃんが物心ついたころにはずっと「ずんちゃん」って呼んでましたから、知らなくても無理ありませんわ……(´;д;`) なにせ、あたしも失念していたくらいなんですから……。
先生も「ずん子」って呼んでるわよ!? それにこの間『契約――エクスチェンジ――』した携帯のアドレスにも「東北ずん子」って登録されてるんだけど!? アンタ自分で入力したじゃない!
『「じゅ」の発音がなまると「ず」になるんですね~♪ まーくつー、「ご主じゅんさま」は呼びにくいのでぇ、「ご主ずんさま」のほうがありがたいです~♪』
……まあ確かに。これからも「ずん子」と呼ぶけど……。衝撃だったわ。
――じゃ、じゃあお餅は茹で直して、「じゅん子」って書き直したほうがいいってことですね、ずんねえさま! 縁起物くらい、実名の方がいいですからね!
うん!(≧▽≦)ゞ それで行こう!
きりたんがホッとした表情で、そう提案します。その場の誰もが予想していなかったカミングアウトでしたが、なんとか、場は収まりそうです。その副産物として、一升餅を修復する目処までつきました。結果オーライというやつです。
(――2時間後――)
そこには、ずん子の提案どおり茹で直されて、再び一つに合体した一升餅の姿がありました。しばらく放置してようやく冷えたお餅の表面に、食紅を使って、きりたんが「じゅん子」と記します。
ううん(o'∀'o)ノ 全然オッケーだよ! ありがとうきりたん!
では、今度は割れないように……(`ω´) 完成品にはあたしが祈祷をいたしますわ。
『ではではぁ、まーくつーが真空パックを用意しますね~♪』
――溶接中の湿度の維持は任せてください。わたしの「きりたん砲」から蒸気を出して、部屋の湿度を高く維持します。
ずん子の提案で直した一升餅を、他の四人の特殊能力を活用して保存していきます。イタコ姉さまの妖力とそらさんの科学力をベースに、めたんときりたんがサポートするシフトはなかなかに効果的で、見事、ばっちりパッケージ詰めされた一升餅ができあがりました。
やったー!。゚(゚^∀^゚)゚。 紆余曲折あったけど、これで完成だね!
――うう……。良かった、本当に……。
『新鮮――ボーン・トゥ・ラヴ・ユー――』なのはいいとして、そういえば、このお餅って食べないのかしら? お正月の鏡餅も、確かこんな感じのパックで売られてるけど、最終的には食べるわよね。
『そういえばそうですね~♪ ちょっと検索してみましょうか~? 「一升餅 食べる」って感じで~♪』
そうね。よろしく、そら。
『はい~♪』
そらさんの左耳についているインカムがピコピコ光ります。検索を続ける彼女をよそに、ずん子たちは、パーティーを仕切り直そうとしていました。
――ではでは、改めて誕生日おめでとうございます、ずんねえさま!
名前のこと、忘れていてごめんなさいね( ;∀;) ピュアな娘に育つようにという願いを込めて「じゅん子」と、お父様とお母様があたしにも教えてくれていたのを思い出しましたわ。
いえいえ!( *'3`)ノ いいんですよ! 「ずん子」というあだ名も気に入ってるんです! なにせずんだとそっくりな名前じゃないですか!
『あ……あの~』
あ、そらちゃんも、めたんちゃんもこっちきて!(*'ω'*) もう一度乾杯し直そうよ!
『それはいいんですけどぉ……あの、「鏡開き」っていう言葉があるじゃないですかぁ……』
はっきりしないそらさんでしたが、彼女が何を検索したかを知っているめたんが「……まさか」と何かに気付いた様子で、テーブルの上の一升餅へと視線を動かします。
そうです。「鏡開き」は鏡餅を割る日。つまり――。
『お餅ってぇ、割ることを「開く」って言ってぇ……、縁起のいいことらしいんですよ~……(汗) というかぁ、むしろ、人力でもいいから最終的には割らないと縁起が悪いらしくてぇ……』
全員の目が、一斉に一升餅に注がれます。真空パックでコーティングされた一升餅はキラキラと輝き、内部からはイタコ姉さまの謎の妖力が、お餅を包み込むように護っています。めたんの溶接も、きりたんの湿度管理も完璧で――そう簡単には、割れそうにありません。
そしてなにより、きりたん筆の「じゅん子」の字が燦然と輝いています。ずん子の本名を記した縁起物ですから、当然、縁起の悪いままにしているわけにもいかず……。
――その後、再び各々が持つ超人的パワーを結集し、汗だくになって一升餅を割ることに成功しましたが――まるでオールスター映画のようなその経緯が、『餅ンジャーズ』としてハリウッドで映画化されることになったのは、また別のお話。
――おわり―― (※今回のアンケートは、「VOICEROID+ 東北ずん子」で最初に喋らせた(or 喋らせてみたい)第一声は何ですか? でございます! まとめのコメント欄にて、お待ちしています!)
次回はこちら http://inove.jp/ivsid1412

















