アニメキャラの関西弁って違和感しかないのに癖になるよな
「関西弁のキャラクター」という存在は、それだけで素敵な記号になっているように思えます。しかし、声優さんがいて、イントネーションの微妙な違いを表現できるアニメならともかく、文字のみで方言を表現しなければならないライトノベルやマンガでは、あえて極端にデフォルメされた「関西弁」を喋る娘もたくさんいますよね。でも可愛いから許しちゃう! 今日はそんなお話。
(――都内某所――)
――カツ、カツ。
真っ暗な部屋の中に、かかとが床を叩く音が響きます。長いポニーテールのようなものをたなびかせてやってきたその少女は、部屋の中央に歩み出ると、奥に佇んでいる「影」に向かって、恭しく頭を下げました。
ポニーテールの少女「……お呼びでしょうか、大将?」
「影」の声「珍しいな。貴様は『足音を立てない』ことが身上だと思っていたが」
ポニーテールの少女「神足法のことやな。うちら――忍者とて、常に忍んで生活をしているわけではないんや。主君の前では、あえて足音を響かせ、自身の位置を伝えることも、また作法」
「影」の声「……左様か。本日来てもらったのは、他でもない。貴殿に任務を与えるためだ。これは、我々『大都会』の、最初の任となる」
ポニーテールの少女「!? では……『例の計画』を始めるってことですかい?」
少女の声が動揺します。それに対し、「影」は微動だにせず、ただ少女を見下ろしていました。
「影」の声「ああ。だが、早まった行動はするな。今回の貴様の役目はあくまで『斥候』だ。敵地に潜入し、敵情を視察して帰ってくればいい。期間は――そうだな、二ヶ月弱でいいだろう。手筈は整っているから、少女の勤めている飲食店にスタッフとして潜入しろ」
ポニーテールの少女「……承知」
影の声「では、行け。くれぐれも、目立たぬようにな」
ポニーテールの少女「……はっ!」
――シュバッ。
ポニーテールの少女が了解の意を示すと、部屋の中から、一瞬にして彼女の気配が消えます。わざと足音を立ててやってきた時とは正反対に――彼女は、一欠片の痕跡も残さず、付近から姿を消しました。
「影」の声「……行ったか」
少女の気配が完全に消えたのを確認すると、「影」は、『金色に光るリンゴ』を片手に、後ろを振り返ります。そこには、彼女の背丈ほどもある、だるま状の、巨大な塊が鎮座していました。
「影」の声「まさか……斥候を出して終わる、なんてことにはならないでしょう。――よろしいのですね、元帥」
――「影」の声に応えるように、巨大な塊が、闇の中で蠢きました。
(――翌日・東北某所『ふるさと女学院』近所のファミレス――)
めたん、そらさん、うさぎがメニューを広げている卓に、アルバイトのずん子が駆けていきます。平日の日中、それもランチとディナーの時間の間ですから、お客さんは冬休み中の彼女たちだけ。ずいぶん落ち着いた雰囲気です。
大晦日から新年にかけてあちこちに駆り出されていたうさぎの顔には疲労の色が濃く刻まれています。ちなみに、実年齢では14歳の彼女ですが、実力測定試験の結果、ずん子たちと同じ高校2年生のクラスに配属されることとなりました。いわゆる飛び級です。
実はね、今日は新しいバイトの子が来るの!ヽ(≧▽≦)ノ それで、私が研修係に指名されたわけです! 先輩として、今日くらいはしっかりやります!(`・ω・´) たぶん、もうそろそろ……。
――カランカラーン。
ずん子がそう言って(薄い)胸を張るやいなや、ファミレスの入口のベルが鳴ります。すっかりファミレス勤めも長くなったずん子は、営業スマイルになって振り返り――
――やってきた少女の姿に、目を見開いて硬直しました。
すいませーん、今日からお世話になるバイトの者なんですけどー。えっと、「東北ずん子」さんー?
あ、うん……(。・´_`・。)
あ、うちのことは「しのびちゃん」でええですよ! ささ、ずん子さん。今日はご教示頼みますね!
……あ、はい(。´・_・`。) じゃ、じゃあまずはスタッフ用の入口と控室から案内するね。あ、でもその前に……。
合点承知ー!! (ふふふ……違和感なく溶け込めたで! さすがうち!)
(――三十分後・ファミレス内――)
ずん子の話を聞くふりをしながら、しのびは、襟元に隠した録音機器に自分の声を吹き込んでいました。彼女は事前に訓練をすることで、予め、ファミレスのマニュアルを身につけてきたようで、そんな「ながら研修」でも、業務をしっかりとこなしていました。
『大将、定時報告や。一月九日午後三時三十分、うちは現在、「標的」と接触中。「標的」はこちらの目的に気付いた様子もなく、アホ面でバイトの研修役をこなしている。言われたとおり、地味に徹してるで! 第一印象はバッチリや!』
『ただ、一つだけ気になることがある。それは、ファミレスにダベりに来てる「標的」の友人たちや。その総合力は不明ながら、そのうち二名から、妖力の気配を感じる。彼女らに動きがありそうなら、こちらも相応の方法で対処をする予定や。以上、報告終わり!』
せやなあ。最近の機械は凄いことになってるんやな。これなら、うちみたいな機械オンチのアホでも使えるわ。
(おっ! 食いついてきたで!! このまま雑談して情報ゲットや!!) あははっ! 失礼やなあ、先輩! うちのどこを見れば機械オンチに見えるんや? この胸か? 確かに、胸がでかい女はアホッぽいって言うからなあ!
(!? この女、気付いて……、いや、気のせいやな!) あははー!! 冗談きついわ! うちかて携帯とか使う普通の女子高生やで~! 先輩の一個下やけどな!
(!? しもた、下手打った! 四人いて携帯持ってないのが三人ってどんな女子高生や!! これじゃあ逆に目立ってまうわ!!) そ、そりゃあアカンでー!! 女子高生なら携帯ぐらいもたなアカン!!
あはは……(ノ∀`;) それにしても、今日はお客さん来ないねえ。できれば、席に案内するのとか、オーダー取るのとか、実際にやってみてほしいんだけど……。
ずん子は苦笑しながらファミレスの入口を見ます。外を通る人たちは、まるでここにファミレスなんて存在しないかのように通り過ぎていくので、ぶらさがっている鐘が鳴る気配はありません。その様子を見て、しのびがこっそりとほくそ笑みました。
(ふふふ……!! 今日はじっくり情報収集できるようにと、店の入口を『関西風忍術・隠れ蓑』で隠してあるんや!!)
(とはいえ、さすがに一人も客が来ないのは不自然やな。それに、客席に来てる「標的」の友人たちも監視しておきたいし、うちが二人いれば……あ、せや!! これや!!)
(――『関西風忍術・奥義! 分身の術!』)
しのびが心の中でそう唱えると、彼女の身体からすうっと、もう一人のしのびが分離していきます。そして、「もう一人のしのび」は気配を殺してファミレスの入口にまで移動すると、改めて、「カランカラーン」と、入口の鐘を鳴らしました。
あ、来たよ!ヽ(´∀`)ノ じゃあしのびちゃん、私は見てるから、頑張って!!∑d(゚∀゚d)
わっかりましたー!! お客さま、一名様ですかー?
やってきたお客さんを見て、ずん子の眉根が寄ります。長いポニーテール、特徴的なマフラー、腕につけた手裏剣入りのホルスター、頭についた「2号」のマーク――そしてなにより、背中に背負った特大の手裏剣。彼女は、どこからどう見ても――。
禁煙席と喫煙席がございますがー?
かしこまりましたー!! こちらのお席へどうぞー!! あとおしぼりとお水どうぞー!! ご注文お決まりになりましたらこちらのボタンでお呼びくださいー!!
…………っと、一丁上がりですわ!! どうでした、ずん子先輩?
おわ!? どないしました?
えー(汗)、どこか不自然なところありましたかねー? 我ながら、初めてにしては上出来な接客ができたと思うんですけど……。 (「もうちょっと自然に」やと!? こっ、こいつら何者や!?)
ここぞとばかりに突っ込みを入れる三人を、ずん子が取りなします。その隙を逃すまいと、しのびが彼女の言葉に乗りますが――。
そ、そのとおりや!! ツッコむだけなら関東人でもできるで!!
せやせや! なんたってうちは忍者…………。
……………………!!!???(ヒュバッ
笑顔だったしのびの顔が、一瞬にして蒼白になります。彼女は爪先だけで跳躍しずん子たちから距離を取ると、額に脂汗を浮かべて自問自答し始めました。
(や、やっぱりや! こいつらうちの正体に気付いとる!? ……な、なんでや!? なんでバレたんや!? 「アルバイトの新人」を騙るうちの擬態は完璧! 人懐っこく「標的」に接触して情報を聞き出すはずやったのに!)
(――ッ!? このピンク髪、読心術が使えるのかッ!?)
(「見れば分かる」やて!? 馬鹿な!? うちの術をそう簡単に…………ハッ!? まさか、この調子では……!?)
(くっ……。やはりバレとったか……!)
……………………ふっ。
? しのびちゃん?(;゚∀゚)
ふははははははははっ!! よううちの擬態を見破ったな、東北ずん子一味!! うちは忍者やって16年やけど、こうも早く、しかも「分身の術」まで見破られたのは初めてや!!
だが勝った気になるのはまだ早いで!! 何と言っても、うちの忍法は108式まであるからなあ!! 今日のところは撤退させてもらうが、次会うときは覚悟しときや!!
――『関西風忍術・煙玉!』 かーらーのー! 『関西風忍術・雲禍斬!!』
――ぼわん、という音とともに煙玉が炸裂し、ずん子たちの視界を覆います。そして、しのびは背中の手裏剣をプロペラのように高速で回転させると、ヘリコプターのように、空を飛び始めたのです。
……戦略的撤退や!! 今日は研修ありがとさん!!
ずん子の悲鳴が店中に響きます。しかし、その頃にはすでに、煙幕の向こうはもぬけの殻。「カランカラーン」という音とともに、しのびは、レストランの入口から空へと消えてしまっていたのでした。
(――同日・夕刻――)
――一面の銀世界を見下ろしながら、東北地方の夕暮れを、一人の忍者が飛んでいました。
『大将、定時報告や。うちは無事、標的の「東北ずん子」との接触に成功。しかし彼我の戦力差は大きく、素性を隠しての任務継続は困難となってしもた。「東北ずん子」には同等の妖力を持つ、少なくとも三人以上の仲間がおることも確認したで』
「影」の声『……そうか。それは、かえって都合がいい。――分かっているな? 我々が彼女に接触する目的を。彼女の正体を暴き、趣味嗜好、それにさまざまな視角と癖を炙り出せ。そして、最終的には、我々のもとへの――』
『――篭絡、やな』
「影」の声「その通りだ。これだけの能力、野放しにしておくには惜しい」
スマートフォンの向こうに佇んでいる「影」が、あの日、ずん子が全国にばらまいた「金色のリンゴ」を掲げます。その淡い光に照らされて、「影」の額に刻まれた「シルシ」がきらりと輝いたのを見て――しのびは、その口元に不穏な笑顔を浮かべました。
『合点承知や。今後は、隠密の予定だった作戦を変更し、こちらの目的を隠しながら彼女と正面から接触する。機械オンチの設定もやめや、やめ! 読心術の罠にかからぬよう、細心の注意を払うで! では、報告終わり!』
「影」の声『了解した。引き続き、斥候の大役を見事勤め上げてみせよ。――三ツ星輝く新世界のために!』
『――三ツ星輝く新世界のために!!』
合い言葉らしきものを呟いて、しのびが通信を切ります。そして、背中の手裏剣の回転数を下げて「ふるさと女学院」の屋上に降り立つと、首にかけた青いマフラーを冬の風にたなびかせ、暮れなずむ太陽の紅に、その髪の毛を溶け込ませるのでした。
――その夜から、ずん子としのびが同じシフトに入った日には、「ふるさと女学院」付近の空に誰のものとも分からない謎の笑い声が響くようになりましたが、それはまた、別のお話。
――おわり―― (※今回もまとめのコメント欄にて感想をお待ちしています! 2013年も、「東北ずん子」と「東北ずん子小説」をよろしくお願いいたします!)
次回はこちら http://inove.jp/ivsid1423
























